「人を殺して死刑になるために来た」
午後2時44分、検察側の論告・求刑がはじまった。死刑求刑が予想されていただけあって、傍聴席の人々は求刑を聞き逃すまいと傾聴していた。
検察側は論告で、被告は被害者4名のみを攻撃対象としていて、「自己の動機によって合理的な行動がとれており、著しく善悪の判断能力が減退している事案ではない」と指摘。
さらに、立てこもりをしていた際に、母親へ絞首刑を示唆する言葉を述べていたことなどから「(被告は)自身の行動が違法であると認識していた」として、「妄想症はあったが、犯行中やその前後に判断能力には問題はなかった」と結論づけた。
そして、検察側は「非常に残虐な態様で、冷酷な犯行を繰り返し、生命軽視の姿勢は顕著」と被告の犯行を非難。
「犯行は誠に重大で、死刑を選択をすることが誠にやむを得ない事案」だとして「死刑」を求刑した。
一方の弁護側は9月26日の裁判で、被告の犯行は計画性がないとしたうえで、「被告人の犯行は妄想の強い影響下によるもので、何の躊躇もなく次々に殺害した」と説明。
被告が、最も重度な妄想症と診断されたことや成育環境、両親からの病気に対する支援がなかったことなどの事情を挙げ、犯行時は「心神耗弱」の状態にあったと結論づけ、「死刑は回避されるべき」と訴えた。
そして最終陳述で、被告は裁判で初めて「黙秘」以外の言葉を発した。
「私は異次元存在から迫害を受けて人を殺して死刑になるために来た。もう二度とプレイしない。被害を受けた人たちには埋め合わせがある。中の人たちを傷つけて申し訳ない。ここは私にとって仮想空間なのでプレイという表現になった」
被告は約40秒をかけて、前を向きながらも身体をかき落ち着きがない様子で、ボソボソと小さな声で話していた。今回の残忍な犯行を「ゲーム」だったとでも言いたかったのだろうか。
次回、10月14日午後1時30分から判決が予定されている。
取材・文/学生傍聴人