「06年ごろ、大半といっていい数の自民党県議が特養の運営に関与」
その背景には、国が1989年に策定した『ゴールドプラン』がある。2000年にスタートする介護保険制度を見据え、高齢者福祉施設の整備を加速させるため、総額6兆円規模の予算が投じられた国家的プロジェクトだ。
「この政策により、特養の建設費のうち、国が2分の1、県が4分の1を補助。さらに市町村が独自の助成を行なうことで、事業者の負担は1~2割程度。条件次第では、ほとんど自己資金なしで施設を整備できるケースもありました」
そう語るのは、高崎市内でグループホームを運営する社会福祉法人「いのかわ会」理事長で、高崎健康福祉大学の非常勤講師を務める松沼記代氏だ。
さらに特養は要介護度の高い高齢者を受け入れる公的性格の強い施設と位置付けられ、運営主体は社会福祉法人に限られている。
「法人資格さえ取得できれば、法人税や固定資産税が非課税となるなど、税制面でも大きな優遇があります」と、松沼氏は語る。
県庁関係者が続ける。
「こうした制度の恩恵にいち早く目を付けたのが、当時、自民党内で影響力のあったベテラン県議でした。彼の指南を受け、多くの自民党県議が社会福祉法人を次々と立ち上げ、施設経営に乗り出したのです。
県が大規模修繕事業を開始する06年ごろには、大半といっていい数の自民党県議が、特養の運営に関わっていました」
現在も依然として、群馬政界と福祉施設の深いつながりは色濃く残っている。
たとえば、大澤正明・前群馬県知事は、太田市内で特養など6施設を運営する社会福祉法人の理事長を務めている。現職の井田泉県議も、県内で特養やケアハウスを運営する社会福祉法人の理事長。
さらに県議を3期務めたのち、今年4月に太田市長に就任した穂積昌信氏も、特養など14施設を運営する社会福祉法人の副理事長として名を連ねている。
こうした地元の有力政治家が関与する施設は、いずれも過去に補助金の交付を受けている。それも一度きりではない。大澤氏の法人は21年と24年、穂積氏の法人は20年と23年に、いずれも2回ずつ採択された。
さらに疑念を深めるのが、この補助金制度の予算編成の経緯だ。