テレビ界にまだ残る「めちゃイケ」のDNA
今回の撮影者はブラックマヨネーズ吉田敬。そのアイカタはもちろんコンビの相方である小杉竜一だ。ちなみにこれまでのアイカタは、コンビの相方に限らず、夫婦、兄弟、親友、仕事仲間など多岐にわたっている。
吉田にとって、小杉は「わかりにくい自分のボケを瞬時にみんなに伝わるようにしてくれる」存在だ。
「他にイイところは?」と訊かれると、しばらく考え「ないなあ…」と笑う。
心配性で繊細な吉田に対し、小杉は「1個目の曲がり角があったら全部曲がっていくタイプ」と型破りな性格。吉田は大阪、小杉は東京と住んでいる場所も違う。同じクラスだったら、まず仲良くなってないという価値観と価値観のぶつかり合いこそがブラックマヨネーズの笑いだ。
本人が撮影しているからこそ、ネタ作りのシーンまで克明に撮影されているのが、あまりにも貴重。それぞれの言葉を待ちながら、掛け合いをしていき、それを書き留めている。各々が別の方向を向いていて目を合わさないまま喋っている、その距離感こそ、ブラマヨだ。
『めちゃイケ』はストイックに笑いを追求していたイメージがあるが、その端々には、あたたかみのような部分も感じた。『アイカタ』にはそうした片岡飛鳥の“人間愛”がにじみ出ている。
番組内での28年ぶりのサシ飲みでは、小杉に感謝を伝える吉田。きっと自らカメラを構え、カメラ越しに見ているからこそ、照れ隠しでき、素直に言えたのだろう。最後に吉田がボケを挟むと小杉が「なんでやねん!」とツッコむ。
「いまの『なんでやねん』、30年前に戻ったような…意気揚々の『なんでやねん』やった」
2人だけの空間で、2人は無防備に笑いあった。「親友」や「相棒」「パートナー」でもなく、「アイカタ」としか言いようがない関係性が映し出されていた。
文/戸部田誠(てれびのスキマ)