ニホンザルのオスは群れを離れる習性が…
この湯河原に居着く「T1群」だが、2016年に30頭近く増えたものの、現在は19頭と減少しているそうだ。それにもかかわらず被害件数が増えているのは、やはりサルが人慣れしたことが大きな原因なのだろう。
また、「T1群」出身の群れを離れたと思われるオスザル2頭が湯河原町から10km以上離れた小田原市に出没し、網戸を開けて民家に侵入したり食べ物を奪ったりする事例が起きている。小田原市環境保護課の担当者は言う。
「実はニホンザルの群れでは、メスは生まれた群れに一生留まるのに対し、オスは繁殖できる年齢に達した4歳から5歳頃に群れを離れる習性があります。
そして去年10月頃から栃木県で発見され、山梨や首都圏などあらゆるエリアで出没する『左手のないオスザル』も話題ですが、あの個体のように200km以上は移動する生物ですから湯河原から小田原に移動することはあり得る話なんです」
しかしなぜ「T1群」出身のオスザルだと見分けられるのか。
「もちろんオスザルにはGPSは付けていませんし『T1群』出身と断定はできません。しかし民家の仏壇のお供物を狙うなどの手慣れた特性と距離の近さで『そうではないか?』と言われているものです」
この2匹のオスの「ハナレザル」は箱根町付近にも出没するようで、箱根町役場の担当者もこう言った。
「『T1群』はちょっと凶暴な性質とも言われておりまして、街の見回りで一緒に動いた湯河原町の猟友会の方とも『こいつはT1群のハナレザルだろうな』と話をしていました。1匹がやや小さめで1匹が大きめなんですね。いつも2匹でつるんでるんです」
小田原市では毎日のようにこのハナレザルの目撃情報を市のHPなどに掲載し警戒している。この2匹のハナレザルがどこかの群れのメスザルと交尾し、生まれた子ザルにドアを開けたり引き戸を開けたりする手口を教えないことを願いたい。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班