最後の課題「見出し」

新聞とデジタル記事とでは、見出しの付け方は明確に異なる。

新聞は、すでに新聞を手に取っている読者に向けて、記事のエッセンスであるリードの、さらにエッセンスを見出しにする。一方で、デジタル向けではプラットフォームに並ぶ無数の記事の中から、自分が書いた記事を何とか選んでもらえるような見出しの付け方をしている。簡単に言えば、競争があるかないかの違いとも言える。

ただ、選んでもらえるなら何でもいいわけではなく、いわゆる「釣り見出し」にならないよう注意する必要がある。

読者の目を引くことを第一目的にすると、どうしても大げさな表現を使いたくなる。その結果として、記事に書いていない内容を見出しに取りがちになる。結果的にその記事単体では多く読まれたとしても、次第に読者が引っかからなくなる。

たとえば、それが47リポーターズであれば、その配信元である「47NEWS」の題字を見た瞬間に読者は「またか」「この媒体は釣り見出しが多かった」と思い出し、選ばれなくなる。

「釣り」にならずに、しかも読まれる見出しを付けるにはどうすればいいか。結論から先に言えば、いまだに100%の正解は分からない。だが、試行錯誤の末、見出しを付ける際の考え方として次の4点は押さえておくようになった。

①文字数は長くていい。50字、60字超でも問題ない

②記者ファーストでなく、読者ファーストで考える

③何についての記事かが分かるワードを、できれば前のほうに置く

④読者の感情を動かせる表現を記事本文から探す

説明していくと、まず①の文字数だが、各プラットフォームが推奨するのは40字を少し超える程度までであることが多い。ただ、これまでにバズった各メディアの記事の見出しを見ていると、50字超が意外と多いと感じた。

それなのに、プラットフォームが長い見出しを推奨しないのは、スマホ画面の見出しの欄に収まるようにしたいからではないかと邪推したくなる。スマホ上では、長すぎる見出しは途中で切られ、以降は「…」と省略されがちだ。でも、そうなっても問題ないと私は考えている。実際に47リポーターズでバズった記事の見出しの多くも、50字を超えていた。

見出しの文字数を抑えることによる弊害もあると思う。文字数を抑えようとすると、どうしても新聞的になる。前述のような省略形を使いがちになり、動詞を書かず、助詞だけ付けて終わらせたくなる。

助詞だけで終わらせるとは、たとえばこんな書き方だ。

【例】 「信頼回復が重要」と岸田首相

この見出しを見てすぐに、岸田首相が何かについて「信頼回復が重要」と述べた、と正確に読み取った読者がどれぐらいいるだろうか。中には、助詞の「と」をandの意味だと思った人もいるのではないだろうか。

紛らわしい表現だと思うが、こうした見出しは新聞では日常的だ。理由はやはり、文字数が制限されているからだ。

記事が読まれるかどうかは見出しで決まるって本当?「47NEWS」の部長が教える「読まれる見出し」4原則_1
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一方で、デジタル記事でこうした見出しの付け方をすると、致命的になる。意味を誤読した読者は、困惑した瞬間に本文を開く気が失せる。ネットでは見出しの文字数が長くなってもいいと考える理由は、ここにある。