「おっ、ついに退陣表明か!」と思ったのに…
「地位に恋々としがみつくものではない、責任から逃れず、しかるべき時に決断をすることが私が果たすべき責務だ」
最高気温35度。9月に入っても猛暑が続く永田町の自民党本部で2日午後1時半、両院議員総会が開催された。
いつになく神妙な面持ちの石破茂総理総裁は冒頭、マイクを持つと、「(参院選の)大敗は私の責任。幾重にもおわびしんければならない」と語り出した。
この冒頭発言の瞬間、出席していた議員の一人はこう振り返った。
「おっ、ついに退陣表明か、と身を乗り出したよ」
しかし、すぐにそれは勘違いだと知ることになった。それが冒頭の発言だ。
「しかるべき時に決断する」
決断すると言うが、肝心の退陣時期には言及しない。つまり、石破総理は「俺はまだ辞めないよ」と続投宣言をしたことになる。
前述の議員は「思わず隣の同僚議員と目を見合わせたよ。『責任から逃れない』『地位に恋々としない』って言っておいて、だけど辞めませんって意味が分からん」
政権を支えた森山裕幹事長が進退伺を出し、残りの党四役の3人はすでに辞意を表明している。そんな四面楚歌でも「辞めない」石破総理はいったいどんな延命策を頭に描いているのだろうか?
政界取材を進めると、一つの会合にその「秘策」が見えてくる。
その前日に日韓首脳会談を終えた石破総理は24日の日曜、公邸でゆったり過ごし、夕方の午後4時過ぎ、黒塗りの車に乗り込み、東京・丸の内のパレスホテルに向かった。
向かった先は同ホテルの日本料理店「和田倉」だった。
「会食嫌い」で知られる石破総理。筆者の私も「他人と酒飲んでいる時間があるなら、じっくり本を読みたい。読めば読むほど自分には知らないことが多すぎると分かる」と直接聞いたことある。そんな「会食嫌い」がわざわざ貴重な休日の夜に会食する相手は誰だったのか?
会食嫌いの石破氏がわざわざ会食した相手
総理番記者が待ち構えた先に表れたのは、小泉純一郎元総理(83)だった。
真っ先に入った石破総理の後に、さわやかな白色ジャケットを着こなした元総理が後から入る。石破総理と小泉氏に加えて、小泉氏の盟友といえる山崎拓元副総裁(88)、「偉大なるイエスマン」こと武部勤元幹事長(84)、石破総理の最側近である赤沢亮正経済再生担当大臣(64)の5人による会食だった。
平均年齢は77歳というこの5人の会食は3時間近くに及んだ。出席した一人に取材してみると、下座に石破総理と赤沢大臣、上座に小泉、山崎、武部の3氏が並ぶ座組みで日本酒を飲み交わしながら高級懐石料理に舌鼓みをうったようだ。
さて、肝心の会談内容だが、ここに石破総理が授かったある「秘策」があるようだ。
それは「衆院解散カード」だと出席者の一人は打ち明ける。
小泉氏と言えば、「郵政解散」を頭に浮かべる人が多いだろう。自ら「改革の本丸」といった郵政民営化法案はいまから20年前、2005年の8月8日に参院で否決された。
衆院では造反者を出しながらもかろうじて通過した同法案は参院で否決されたことを受けて、反小泉の急先鋒だった亀井静香元運輸大臣は行きつけの料亭でどんちゃん騒ぎの祝勝会を開いていた。