これは日本の統治システムが危うくなっている兆し 

選挙での敗北は、この計算を動かす大きな要素になる。石破政権が参院選で過半数を失った時、反石破派は「今が好機だ」と判断したわけだ。政権の弱さが明確になり、行動のコストが最も低く、成功の確率が高まったと見えている。

選挙直後には政権サイドの一部で巻き返しの可能性が語られたが、これは大きなものになっていない。敗北の事実そのものが重く、国民の期待が再び高まる兆しは見えなかった。

政権の基盤が弱いという構造そのものが変わらない限り、選挙後のわずかな動きでは反石破派の確信を揺るがすことはできないままだ。

「石破おろし」は単なる政局の混乱ではない。それは、日本の統治システムが危うくなっている兆しである。内部の有力者が合理的な利益追求を続ける結果、システムの安定性が揺らぎ始めている。

政治家たちが国家全体の利益や長期的な安定よりも、自分たちの短期的な利益を優先する時、民主主義のルールは形だけのものになり、制度は崩壊の淵に追い込まれる。

石破政権の命運は、政策の成否や国民の支持だけでは決まらない。

自民党内部で展開される冷徹なサバイバルゲーム 

自民党内部で展開される冷徹なサバイバルゲームが決定権を握っている。そのゲームには一つしかルールがない。「最も利益を得る者は誰か」という問いに答える者が勝者となり、敗者は一気に権力から排除される。

今の政局はまさにその力学の中で進行しており、石破首相は当事者であると同時に標的でもある。政治がこのような「サバイバルゲーム」と化す時、最も大きなツケを払うのは、そのゲームから完全に締め出された国民である。

政治家たちが自らの権力と利益のためだけに動き、国全体の未来や長期的なビジョンを顧みなくなれば、政治はただの機能不全に陥る。

社会保障、教育、経済再生といった喫緊の課題は先送りにされ、国民の不安や不満は増大するばかりだ。

自民党が末期症状にある今、求められているのは、政治家個人の損得勘定を超え、この国のかじ取りを本当に任せられるのは誰なのか、国民自身がその問いを突きつけ続けることだろう。

文/小倉健一