石破政権の下で進行している「石破おろし」 

民主主義の崩壊は、この計算が崩れた時に始まる。有力な政治勢力が「ルールを守って得られる将来の利益」と「ルールを壊してでも政権を倒すことで得られる利益」を比べ、後者が大きいと判断した瞬間に、システムは危機に直面する。

つまり、理性に基づいた損得勘定こそが、民主主義の安定と崩壊の分かれ目になる。

石破政権の下で進行している「石破おろし」は、この理論を当てはめると理解しやすい。自民党内の反石破派は単なる感情や派閥の意地、メンツで動いているわけではない。

彼らは自らの将来を守るために利益と損失を計算し、政権を倒すという行動の方が合理的だと考え始めている。感情的な対立のように見えても、その裏には冷静な戦略的判断が働いている。

反石破派の計算にははっきりとした構造がある。まず「石破政権を支え続け、ルール通りに次の総裁選まで待つ」という選択肢を考える。

「現状維持」よりも「政権打倒」の方が合理的だという結論 

「石破政権崩壊カウントダウン、始まる」ただの損得勘定と醜悪な権力闘争の果て…国民そっちのけ、自民党は末期症状か_2

この場合に得られる利益は限られている。現在の政権は少数与党であり、国会の運営はきわめて困難である。石破首相が強い指導力を示し、支持率を大きく回復させ、次の選挙で勝利する可能性は低い。

仮に政権が生き延びても、石破首相には強い派閥の基盤がない。その下では自派閥が得られる見返りは小さいままである。むしろ政権の失敗の責任を共に負わされる危険さえある。将来の利益の期待値は低いと見積もられる。

次に「今の段階で政権を倒す」という選択肢を計算する。石破政権の支持率は長く低迷しており、国民の政治不信も根強い。この状況で首相を引きずり下ろしても、大きな反発は起きにくい。つまり行動のコストは低いと判断できる。

一方で、政権打倒に成功すれば、自派閥が主導権を握り、息のかかった新総裁を立てることができる。そこから得られる利益は大きく、見返りは計り知れない。

成功の確率も党内の多数派工作次第で十分に現実的だと考えられる。この損得勘定の結果、「現状維持」よりも「政権打倒」の方が合理的だという結論に達した勢力が、実際に公然と動き出しているわけだ。