現代のバベルの塔だったのかもしれない 

建築コストの上昇やゼネコンとの力関係の逆転という前門の虎に加え、再開発を手掛ける不動産デベロッパーも短期的な利益を求めるアクティビストという後門の狼に囲まれており、大型再開発を進めること自体、困難な状況となりつつある。

現に、野村不動産は中野サンプラザに続き、JR津田沼駅南口で計画されていた複合ビルの再開発計画を一時中断、JR岐阜駅(岐阜市)で予定されていた、タワーマンションの階数を34階から10階分ほど減らすことも明らかになっている。 

岐阜駅前
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「中野サンプラザのDNAを継承した中野らしい新しいシンボル、拠点の整備、そして中野駅周辺の街づくりを着実に進めることで、皆様が誇りに思えるような街の実現を目指してまいります」

中野区の酒井直人区長は7月の定例記者会見で中野駅前の再開発計画見直しについて語った。言葉こそ前向きだが、その表情は硬いままだった。中野サンプラザの再開発は暗礁に乗り上げた形で、先は見えない。

旧約聖書では、人々が天まで届くような塔を建てようとした傲慢な姿勢が神の怒りを買い、最終的に崩壊したとされる。

中野サンプラザは262メートルという、都庁を超えるような超高層ビルを建てようという計画だった。これは、現代のバベルの塔だったのかもしれない。

文/築地コンフィデンシャル