麻雀でもゴルフでもパワハラの嵐
――女性遊びもせずマジメで有名な村田兆治さんも麻雀をすると人が変わってしまうんですね。
愛甲猛(以下、同) 当時の球界の麻雀エピソードはいくらでもあるよ。昔は遠征先のホテルに必ずジャン室(麻雀室)を用意してくれてたから。
――誰が強かったんですか?
落合(博満)さん。静かに打ってるんだけどめちゃくちゃ強い。絶対にフラないから、野球だけじゃなくて麻雀でも人の心を読むのが得意だったんだろうね。
逆にイケイケなのが有藤(通世)さん。俺が20歳くらいのときかな。大阪遠征で有藤さんと吉岡(邦広)さんたちと麻雀してたんだよ。それで俺がリーチをかけて有藤さんの捨て牌で「ロン」と言って牌を倒そうとした瞬間、有藤さんがドスのきいた声で「アガれるもんならアガってみろや」とすごんできて。
――怖すぎる(笑)。
それで45度まで倒しかけた牌を指の力を目一杯つかって引き戻したよね。大した役でもないのに命は懸けられない(笑)。プロ生活であんなに指先の力をつかったのは後にも先にもあれだけだよ。
――パワハラ麻雀ですね。
あの時代はパワハラだらけだよ。ゴルフでも、ミドルホールを2オンしてすごく長いバーディパット打とうとしたら、カップに何かが入ってる。「葉っぱでも入ってるのかな」と思って見に行ったら、それが1万円札だった。すると、前の組で回ってた有藤さんが「おい猛! 入ったらやる。外したら払え!」って。
――メチャクチャですね。
カネやん(金田正一)もひどかった。一緒にラウンドを回ってて、最終ホールのパーパットを決めれば俺の勝ち。だけどカネやんはカップの前に仁王立ちして「入れれるもんなら入れてみぃや」って。
――その脅しは、ロッテの伝統なんですか……。
金いっぱい持ってるんだからいいじゃんと思うけどね。あの人たちは本当に負けず嫌いだよ。