SNSでは誤情報も…エレベーターでの対策にも限界
今月20日に起きた事件の手口も似ている。片山さんは勤務先からスーパーなどを経由し自宅に帰っているものの、谷本容疑者は片山さんが会社を出たところから50分にわたって後をつけ、オートロックを突破し、エレベーター内で片山さんを襲った。
事件をめぐって、Xでは「エレベーター内の閉まるボタンは長押しすると、外のエレベーターホールのボタンより優先される」といった投稿が拡散されているが、これは誤情報の可能性があるという。
国内で4台に1台のシェアを誇るエレベーターメーカーの最大手「株式会社日立ビルシステム」の担当者が解説する。
「会社様の種類によっては異なりますが、ウチの製品では基本的にエレベーター内のボタンが、外より優先されることはほとんどありません。エレベーターの扉には駆け込み事故防止のため物理センサーが取りつけられていることが多いためです」
また業界関係者は、エレベーターに対して防犯を求めることが難しいと明かす。
「エレベーターには防犯カメラが取りつけられていることが多いものの、防犯カメラに犯罪抑止能力はありません。何かことが起きたとき、その証拠に結びつける機能しかなく、起きてしまうこと自体は防げない。防犯機能がない以上は、利用者の方に気をつけていただくことしかできない。夜道を歩くのと同じ理屈です」
前出の日立ビルシステムの担当者は、子ども向けに啓発活動を行なっているという。
「エレベーターに乗る前に周りに不審な人がいないか。不審な人が周りにいたら、いったん乗るのは見合わせるとか。そういったことを、小さい子がエレベーターに乗るときに気をつけてくださいね、と学校に出向き紙芝居などを使って、注意喚起を行なっています。
もちろんこれらは女性にも当てはまることではありますが、女性向けには現在行なっていません」
一般社団法人日本エレベーター協会は、「個別の事案についてのコメントは控えさせていただきたいこと、ご了承願います」とするものの、
「一般論にはなりますが、エレベーター製品としての確実な対策は難しいと考えます。防犯意識の高まりもあり、有償付加仕様で①防犯カメラの設置、乗り場への(かご内を映す)モニター設置、②大型窓により外部からかご内が見えるようにする、③セキュリティカードによる利用者認識、④防犯警報ボタン、モーションサーチ機能、などが設備されたりはします。ですが、あくまで犯罪行為への『抑止力』(発生時の証拠も含む)と考えます。
いずれにしても建物及び設備での対策には限度があり、最終的には、『人的』対策が最後のとりでです。『不審者とエレベーター内で落ち合いそうになったとき』は、自身の背中を見せない、電話を受けるふりをして(乗らない)降りる、人が多くいるエリアに一時退避する。『エレベーターに乗る際に気をつけること』は、知らない人物がいないかを意識いただくことと考えます」
と文面で回答を寄せた。