店が混んでいる時は飲み物や料理を運ぶのを手伝ってくれた
3年前に女性の首を絞めた傷害などの罪で執行猶予中であるにもかかわらず、そのことを周囲に隠して、東京での生活を送っていた谷本容疑者。歪んだ願望を隠し持っていた彼は、いかにして社会に溶け込んでいたのか――。
「いい奴という印象しかなかったから、本当に驚いた。いまだに信じられないよ」
そう語るのは、谷本容疑者が常連客として訪れていた酒場の店主だ。初めて訪れたのは、およそ1年前だという。
「彼が勤めていた会社の上司に連れられてきたのが最初でした。以来、多い時では週1くらい来ていたけれど、いつも会社の人たちと一緒で、一人で飲みに来ることはなかったね。
うちでは生ビールや緑茶ハイなんかを飲んでたけど、酔って醜態をさらすようなことは一度もない。むしろ、店が混んでいる時なんかは飲み物や料理を運ぶのを手伝ってくれることもあった」(店主)
新宿区の運送会社に勤め、「主に酒の運送を担当していた」(元従業員)という谷本容疑者。四畳半の社員寮で暮らし、日曜日と平日1日の週休2日で働いていたが「勤務態度はいたって真面目で、従業員から“谷やん”と慕われていた」「取引先からのクレームもなかった」と、勤め先の社長も証言している。
「同僚なんかが、『あいつは飲んでも仕事の話ばかりでつまらないんだ』と冗談交じりに話すくらい、とにかく仕事一筋という感じだった。あまり自分の話をしている様子はなかったが、『(地元)神戸の悪い奴と付き合いたくなくて上京したんだ』ということは言っていたね。
今思えば、その悪い奴が本当に存在したのか、怪しいものだけど……。もちろん、前科の話なんて聞いたことがなかった」(店主)