新しいものを信じたところで…

価値観のアップデートという言葉をよく聞くようになった。なんか古い価値観はダメらしく、新しいのに合わせろということらしい。多様性の尊重とかパワハラをしないとか、なんとかかんとか。じゃあ過去にやってきたことは何だったんですかと言いたくなる。

新しいモノが良いのかは置いておこう。古いモノがやたらにダメだと叫ぶのだけど、それはかつて新しいモノだったんじゃないのか。いま押し付けてくるアップデートされた価値観もすぐ陳腐化するんでしょ。先述の不真面目さにも繋がる。いま信じさせられていることがいつひっくり返されるかわかったものじゃない。どうせそのうち誰かの都合で変えられてしまうのだろうと思ったら、本気で信じるのは難しい。

有力企業がダイバーシティ施策をやめると言い出したのは象徴的だった。企業の気持ちもわかる。管理職の男女や人種の比率を上げろ(変えろ)と社会から要請される。その通り努力しても、まだまだこれが足りないと無限の要求が続く。

写真/shutterstock 写真はイメージです
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そもそもダイバーシティとは何なのかは隅に追いやられて、特定属性の比率だけを叫ぶようになっていく。もはや多様性ではなく二様性(Aかnot Aか)である。

しかしダイバーシティは社会にとって間違いなく大事なことで、もっと全員で協力的に大切に進めていくべきだったはずだ。それをあっけなく巨大企業が放棄してしまったことには失望も怖さもある。若者はいっそう「あっ、他人の言うことを簡単に信じちゃいけないんだな」って思うだろう。

若者恐怖症ーー職場のあらたな病理
舟津 昌平
若者恐怖症ーー職場のあらたな病理 (祥伝社新書 716)
2025/8/1
1,056円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4396117160

「若者がこわい」は、職場に潜むあらたな病だった。
気鋭の経営学者が読み解く“年の功”消滅社会の正体

「コンプラ大丈夫?」「それ、ハラスメントですよ」
こんな言葉が飛び交う現代の職場では、若者に対する漠然とした恐怖が広がっている。

少子化による超・売り手市場により、年功序列のパワーバランスは逆転した。新人を腫れ物扱いしたり、若手に過剰に忖度している場面に、心当たりはないだろうか。

そんな時代、上司や先輩社員は若手への適切な指導や対話ができずに悩み、ときに「どうせすぐ辞める」「関わるだけ損」などと、距離をとってしまう。こうした空気が、職場に深刻なコミュニケーション不全をもたらしている。

本書では、経営学者・舟津昌平氏が、「飲み会離れ」「早期離職」「やりがい・成長」「ハラスメント」などのキーワードを手がかりに、職場で静かに進行する“若者恐怖症”の実態を明らかにする。
データと現場の声をもとに、通説の矛盾を暴き、世代間の不信やすれ違いの背景にある社会構造を読み解いていく。

部下のマネジメントに悩む管理職はもちろん、20代・30代にも、Z世代にも読んでほしい、
すべての働くひとに向けた、職場改善の処方箋。

【目次】
はじめに 老害になりたくないあなたへ
第1章 若者恐怖症─たとえば、飲み会恐怖症
第2章 若者論の交通整理─Z世代をたらしめるもの
第3章 そして何が問題なのか─神話の喪失、竹槍と学徒動員
第4章 離職恐怖症─若者はすぐ会社を辞めるのか
第5章 やりがい恐怖症─若者は成長しないといけないのか
第6章 ハラスメント恐怖症─若者はなんでもハラスメントって言うのか
第7章 持病とつきあっていく─いっしょに恐怖を飼い慣らす

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