RTAの練習をしていたら、YouTubeのおすすめ欄がヒップホップだらけに

――音楽ゲームって、1曲の時間は決まっているわけじゃないですか。それで最速を競うって、なかなか想像が難しいのですが。

思いますよね? 私もそう思ってました(笑)。そもそもその疑問が、このRTAの出発点といえます。RTAの存在は前々から知っていて、自分でもやってみたいな、と。でも自分の得意分野は音楽ゲームで、はたしてRTAが成立するかどうかわかりませんでした。

でも、試してみると意外にタイムを短縮できるポイントは十分にあって、しっかりRTAできるんですよね。

例えばメニュー画面でのステージ選択。いかに精密な足さばきで操作するかがタイムを左右します。また、特定のタイミングで曲を中断する場面があるのですが、これも中断条件を満たしてしまえばいつでも終了操作を行っていいです。なんだか際限なくタイムが縮みそうな雰囲気がありますよね。もちろん計算上理想的な中断ポイントは存在するわけですが、果たして人間の足でその瞬間を確実にとらえられるか?というと、奥が深いです。

DDR RTAの中でもこのSTRIKEという作品に固有の事情としては、プレイスキルと同じくらい事前の準備が大切という点が挙げられます。

このバージョンのRTAレギュレーションでは、ゴールに至るルートが1通りではないので、自分の実力と相談しながら、どのステージに挑むのかのチャートをあらかじめ組むことになります。RTA in Japanに出場するにあたって、週1でフリースペースに通い詰めて研究と練習、チャートの調整を繰り返していました。

実は、その研究の結果諦めてしまった「幻の最短ルート」が存在するんですよね。終盤のエリアに、たった30秒と非常に速く終了するステージがあるのですが、普通のDDRでは考えられないような罠が二重三重に仕掛けられているんです。

今の私の実力だと数時間かけて1回クリアできるかどうか、という難易度なので、RTA的には迂回ルートに行かざるを得ないという現状です。ロマンあふれる理論上最速の世界、いつかは踏み入れてみたいですねえ。

ちなみに、STRIKE以外にもPlayStation/PlayStation2向けの家庭用DDRは発売されていて、その中にはSTRIKEとまた違った趣のあるRTAカテゴリが存在するものもあります。これもなかなか面白いですよ。

「1秒間で上パネルを7回踏むだけ(ただし曲に合わせてはいけない)」みたいなバラエティ豊かすぎるチャレンジを、いかに少ない試行回数で突破するかを競っていたりします。


「本番用のカンペ」と銘打たれた資料はほとんど暗号の様相である。YUDAI氏いわく「これで内容が理解できるくらいDDR STRIKEに詳しいなら、今すぐRTAに挑戦してほしい」だとか。

「本番用のカンペ」と銘打たれた資料はほとんど暗号の様相である。YUDAI氏いわく「これで内容が理解できるくらいDDR STRIKEに詳しいなら、今すぐRTAに挑戦してほしい」だとか。

――譜面を覚えるのは前提ということですか。

全部の曲の譜面を完コピしているわけではありません。特に私は丸暗記がどうも苦手でして...。ですが、おさえておかないとダメなポイントだけは把握するようにしています。家までの帰り道のようなイメージですね。

――体が覚えている?

反復練習で自然と体が覚えることもありますが、今回披露したRTAに関して言えば、むしろ「体"で"覚えにいった」場面もありました(笑)。1曲だけどうしても譜面の丸暗記が必要になる場面があって、それに対する対応策ですね。

実は、DDRほかダンスゲームには、スコアを競うだけではなく、プレイの華麗さを競う「パフォーマンス」という文化があるんです。踏む方向の指示しかないDDRの譜面に対して、どんな解釈でどんな振り付けを作るのか?という楽しみ方ですね。パフォーマンスの大会や披露会みたいなものもあって、そういう場面で画面を見ずに後ろ向きで踊って観客にアピールするようなプレイができると、ウケたりするんですよ。

以前、ダンスもゲームもできる友人と一緒に、そんな背面パフォーマンスに挑戦したことがあったんです。その練習の時、あんなに苦手だった譜面の丸暗記が、振り付けがあるだけでスルスルと頭に入っていく感覚があったんです。

その経験もあって、今回丸暗記に対する答えとして「自分で振り付けを作ってダンスで覚える」を採用しました。が、自力でダンスの振り付けを考えるなんて経験は初めてで、まあ苦労しましたね。YouTubeでヒップホップのステップ集を見ながら、覚えたい譜面と照らし合わせて...なんてことを繰り返していたら、いつの間にかYouTubeのおすすめ欄がヒップホップで埋め尽くされました。

動画の配信中、ゲームと全く関係なくダンスを練習し始めるYUDAI氏。DDRは魅せプレイ(見ている人を魅了してしまうほどのゲームプレイ)が映えるゲームだ。
動画の配信中、ゲームと全く関係なくダンスを練習し始めるYUDAI氏。DDRは魅せプレイ(見ている人を魅了してしまうほどのゲームプレイ)が映えるゲームだ。
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