「DDRをやめたら、病院に通うことになると思います」

――YUDAIさんはDDRの元プロとのことですが、プロの試合ってどんな風なんですか?

ざっくりと「自分と対戦相手が1曲ずつ指定して、計2曲をプレイして、より多くの曲で相手より高スコアを出した方が勝ち」という感じです。プロが出る公式戦は、チーム戦だったり試合ごとに使える曲が変わったりともう少し複雑なルールが決められているのですが、大体この理解で大丈夫です。プロ以外も出場できる大会でも、このルールが標準だと思います。

――当日に対戦する曲がわかるってことですか?

そうなります。ですが、対戦相手が多くの大会に出ているような人だと、戦歴から選曲の傾向が掴めるんですよ。歩数(1曲中に踏む矢印の数)が多い曲が得意なのか、リズムが独特な曲に強みがあるのか、など。時にはその人が好みの曲のジャンルや年代なんかも推理することがあったりします。

もちろん、相手も同じように自分の曲を予想してくるので、あとは読み合いですね。

自分が不得意な曲をこっそり練習したり、相手の得意曲を重点的にやりこんだり。プロの世界の「得意」ってほとんど「満点」を意味していることもあるので、強みが近い選手同士の戦いは度胸勝負でもあったりします。試合本番一発勝負、少しでもリズムが狂った方の負け...なんてヒヤヒヤするシーンも多いです。メンタルとフィジカル、どちらで仕掛けるのか、なんて戦略も音楽ゲームの大会の見所です。

――1日に数十曲も対戦していると、体力が保たなそうです。

足ガッタガタになりますよ!プレッシャーがかかる中での跳んだり捻ったりの全身運動ですからね。RTAとはまた違う難しさがあります。「DDRはeスポーツじゃなくてスポーツ」とか「eはeでもextremeのe」なんて意見もよく聞きますね。

――プロともなると、やはり普段の体力トレーニングも大切に?

どうでしょう。DDRで使う筋肉って、ほかの運動で使う筋肉とは違う気がするんです。DDR筋っていうのかな。僕自身、学校の体育は得意なほうではありませんでしたが、DDRは昔から得意でした。DDRに特化した体の動かし方があって、それはやはりDDRでしか鍛えられないんだと思います。

僕はDDRに健康を支えてもらっている節もありまして。コロナ禍ではゲームセンターに行くのも控えていたのですが、なんと10キロも太ってしまいまして。DDRをやめると、代わりに病院に通うことになると思います。

――あらためて聞くと、非常に運動になるゲームなんですね。

いろいろな遊び方ができて、健康の支えにもなる、すごくいいゲームだと思います。
クリアやスコアを追い求めるストイックな取り組み方も魅力的ですが、パフォーマンスやそれこそRTAみたいに、工夫して楽しみを見出すというのもとても楽しいですよ。

取材・文/笠木渉 画像提供/YUDAI