「国民の16%がリアル視聴をやめた」下げ止まりの兆しすら見えないテレビ業界はどこに新たな活路を見出すのか
フジテレビをめぐる問題をはじめ、大揺れのテレビ業界。しかし、業界全体の凋落は今に始まったことではない。広告収入はネットの半分に落ち込み、まったくテレビを見ない若者が急増した。このままテレビを見る人は誰もいなくなるかもしれない。
元NHKアナウンサーの今道琢也氏の著書『テレビが終わる日』より一部抜粋・再構成してお届けする。
テレビが終わる日#1
テレビのメディアとしての最大の強み
しかも、下げ止まりの兆しは見えません。直近の2023年の行為者率は、前年の73.7%から、2.6ポイントも減少しています。もし今のペースで減り続ければ、あと10年もしないうちに、テレビをリアルタイムで視聴する人は6割を切ることになります。
テレビのメディアとしての最大の強みは、全国一斉に番組を送り届け、同時に何百万人、何千万人もの人が視聴するという点にありますが、その強みが、今失われつつあるのです。
一方、家庭用のブルーレイレコーダーなど、様々な録画機器があるため、リアルタイムではなく、録画でテレビを見る人が増えているのではないか、という推測も成り立ちます。これについては、「テレビ(録画)の行為者率」の推移で、確かめることができます。
こちらの数値は、2012年から2023年まで10%台後半で推移しており、さほど大きな変化はありません。つまり、リアルタイム視聴が減った分を、録画機器による視聴が補っているわけではないのです。
では、リアルタイム視聴が減った分の時間は何に使うようになったのかと言えば、やはりインターネットです。「インターネットの行為者率」は、2012年に71.0%でしたが、2023年には91.2%にまで伸びています。
ただし、以上のことから単純に、「テレビ番組を見る人が減っている」とは言い切れません。最近では、インターネットでテレビ番組を視聴している人がいるからです。テレビ局各社は、インターネット経由で視聴者を取り込もうと必死です。
NHKには「NHKプラス」がありますし、民放は共同で「TVer」を運営しており、インターネット上で見逃し番組等を見られるようになっています。また、テレビ局がYouTubeに公式チャンネルを持ち、自局のニュースや過去の資料映像を配信しているケースも珍しくありません。
テレビ局もインターネットに活路を見出す時代に
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そのことを踏まえると、テレビを見る人が減ったのではなく、「リアルタイム視聴」から、「ネット上での視聴」に移っただけではないかという仮説も成り立ちます。ひとまず、「テレビのリアルタイム視聴」をする人は減り続けている、ということは間違いありません。
文/今道琢也 写真/shutterstock
2025年6月18日
968円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4106110917
フジテレビをめぐる問題でテレビ界は大揺れだ。しかし、業界全体の凋落は今に始まったことではない。広告収入はネットの半分に落ち込み、まったくテレビを見ない若者が急増、就活人気ランキングでは今や 100位圏外という。反転攻勢をかけようにも、個人の嗜好に強く訴えるネットのコンテンツには歯が立たず、といって海外展開も難しい。かつての「メディアの覇者」に未来はあるのか? データを駆使して徹底分析。
【目次】
第1章 テレビ離れはここまで進んだ
いずれ誰も見なくなる?/国民16%がリアル視聴をやめた/録画でも視聴時間を補えない/激減する10 代、20 代の視聴/7割以上がネット動画を優先テレビ番組は「補欠要員」に
第2章 落ち込む収入、広告はネットの半分に etc.
供給量が増えれば価格は下がる/人口減少が経営を直撃/海外への進出も困難/系列を超えて進む効率化 etc.
第3章 就職人気ランキング100位から消滅
マスコミの中でも取り残される/民放連も指摘する採用難/今も好待遇なのだが…/「すごくブラック」「落ち目な感じ」 etc.
第4章 テレビへの信頼性はなぜ落ち込んだのか
やらせ、捏造、誇張、切り取り/「世界の中心」という錯覚/ネタ探しに追われる日常/飲み会費用38万円を経費として精算/テレビは「既得権者」/最後の「護送船団方式」 etc.
第5章 テレビからネットへ、なぜ主役は交代したか
ネット動画の多様性/嗜好に合ったディープな内容/中途半端さはテレビの宿命/パーソナル化は止められない/技術革新による淘汰 etc.
第6章 テレビに残された優位性はあるのか
ネット企業進出で崩れる優位性/国際スポーツ中継はどうなる/AIによる動画生成の衝撃/競合品が無限に生産される etc.
第7章 テレビが終わる日
船底に穴が空いたタイタニック/20年後の衝撃的な未来像/「岩盤支持層」の入れ替わり/「鉄道会社」型の企業に/テレビなき時代は来るか etc.