テレビのメディアとしての最大の強み
しかも、下げ止まりの兆しは見えません。直近の2023年の行為者率は、前年の73.7%から、2.6ポイントも減少しています。もし今のペースで減り続ければ、あと10年もしないうちに、テレビをリアルタイムで視聴する人は6割を切ることになります。
テレビのメディアとしての最大の強みは、全国一斉に番組を送り届け、同時に何百万人、何千万人もの人が視聴するという点にありますが、その強みが、今失われつつあるのです。
一方、家庭用のブルーレイレコーダーなど、様々な録画機器があるため、リアルタイムではなく、録画でテレビを見る人が増えているのではないか、という推測も成り立ちます。これについては、「テレビ(録画)の行為者率」の推移で、確かめることができます。
こちらの数値は、2012年から2023年まで10%台後半で推移しており、さほど大きな変化はありません。つまり、リアルタイム視聴が減った分を、録画機器による視聴が補っているわけではないのです。
では、リアルタイム視聴が減った分の時間は何に使うようになったのかと言えば、やはりインターネットです。「インターネットの行為者率」は、2012年に71.0%でしたが、2023年には91.2%にまで伸びています。
ただし、以上のことから単純に、「テレビ番組を見る人が減っている」とは言い切れません。最近では、インターネットでテレビ番組を視聴している人がいるからです。テレビ局各社は、インターネット経由で視聴者を取り込もうと必死です。
NHKには「NHKプラス」がありますし、民放は共同で「TVer」を運営しており、インターネット上で見逃し番組等を見られるようになっています。また、テレビ局がYouTubeに公式チャンネルを持ち、自局のニュースや過去の資料映像を配信しているケースも珍しくありません。
そのことを踏まえると、テレビを見る人が減ったのではなく、「リアルタイム視聴」から、「ネット上での視聴」に移っただけではないかという仮説も成り立ちます。ひとまず、「テレビのリアルタイム視聴」をする人は減り続けている、ということは間違いありません。
文/今道琢也 写真/shutterstock












