供給量が増えれば価格は下がる
インターネットが普及する以前、テレビCMは最強の広告でした。新聞や雑誌の広告は文字・画像しか使えず、ラジオの広告は音声しか使えませんが、テレビCMはこれらすべてに加えて動画を使うことができます。それ故、他の広告媒体に比べ消費者に圧倒的なインパクトを与えることが可能でした。
さらに、テレビはほぼすべての家庭に普及していました。家庭だけでなく、ホテルの客室、病院・駅・空港などの待合室にも置かれています。家に帰ったらとりあえずテレビをつける、ホテルや旅館に落ち着いたらとりあえずテレビをつける、という行動パターンが人々の間で習慣化していました。
スマホがない時代は、暇なときには自然とテレビに目をやっていましたから、テレビの広告媒体としての価値はとても高かったのです。しかし、インターネットの台頭によって、その優位性が崩れていきました。
とりわけ動画共有サイトの登場は、テレビ広告の動向に大きな影響を与えたはずです。例えば、YouTubeは広告を見た上で動画を無料で視聴できるわけですが(無課金の場合)、このビジネスモデルはテレビと全く同じであり、「広告放送」そのものです。違うのは、動画が放送用の電波を通じて視聴者に届くか、通信回線を通して届くか、というところだけです。
そして、YouTubeには、テレビよりも遥かに多種多様なチャンネルがあり、その中から自分の好みに合った最適な動画を選ぶことができます。旅行、ペット、スポーツトレーニング、グルメ、各種の健康法、ピアノ・バイオリン・ギターなど楽器の練習法、そのほか数限りなくあります。
国内だけでなく、海外のチャンネルも自由に視聴することができます。チャンネルがありすぎて、何を見ようか選ぶのに苦労するほどです。動画に字幕をつけたり、自動翻訳をつけたりすることもできます。
このため、外国で制作された動画であっても、何のバリアも感じずに視聴することが可能です。いつでも好きなときに見ることができるので、放送時間に合わせる必要もありません。録画をセットする手間もありません。