フェイクニュースを見抜くポイントは「感情」
さらにやっかいなのは、フェイクニュースに騙されまいと意識していても、それを完全に見抜くのはもはや不可能になっている点だ。
「誰であれ、フェイクニュースを100%見抜くことはできないという認識を持つことが必要です。大切なのは、騙されないことではなく、『自分も騙される可能性がある』と理解しておくこと。そうすれば、仮に誤った情報を信じたとしても、後から修正する柔軟さを持てます。
そのうえで、感情を大きく揺さぶられるような投稿を見かけたときには、一度立ち止まることが有効です。真偽を判断する前に、『これは感情を刺激するための情報ではないか?』と、自分に問いかけてみる。それだけでも、フェイクに巻き込まれにくくなります」
こうした視点を個人が持つだけでなく、社会全体で共有することが、フェイク情報の拡散を防ぐ大きな力になるという。そして今後、対策として有効になるのが、「感情に着目した仕組みづくり」だと塚越氏は指摘する。
「たとえばXでは、未読の記事をリポストしようとすると『まず記事を読んでみませんか?』と表示され、ユーザーに注意を促す仕組みがあります。これと同様に、感情を強く刺激する投稿に対しても注意を促す仕組みを構築することは、技術的には実現可能です。
もちろん、どのような投稿を対象とするかといった判断基準には慎重な議論が必要ですが、フェイクへの対応を“事実か否か”だけでなく、“感情”に着目して設計する視点は、今後はますます重要になると思います」
フェイクに引っかかってしまうのは、決して“騙されやすい人”だからではない。誰もがその可能性を持っている。それだけ、現代の情報技術は巧妙で、判断が難しい時代になっているのだ。
特に選挙のように、一票の重みが大きい場面では、いつも以上に、情報との向き合い方に細心の注意を払いたい。
取材・文/集英社オンライン編集部