近衛兵のとき「2・26事件」を経験
水野清隆さんは第一次世界大戦が開戦した1914年(大正3年)に静岡で生まれ、20歳で日本軍の最精鋭である近衛兵として従事した。その際、経験したのが、近代日本最大のクーデターとも言われる「2・26事件」だ。
「2・26事件」(1936年)とは、軍主導の国家改造を求め、陸軍の青年将校らが率いた約1500人の部隊が、天皇の側近や大臣を次々と殺害し、首相官邸や警視庁など国の中枢を占拠した事件。クーデターはわずか4日で収束したが、日本が対外強硬路線を取り、太平洋戦争へと突き進むきっかけとなった日本史に刻まれる1ページだ。
過去のことを聞くと、なにかと「そんな昔のことは忘れちゃったな~」という清隆さんだが、この90年前の出来事を憶えているのだろうか。
「岡田総理大臣(当時)と間違えられて秘書官が殺されたりな、あのときゃ大変な混乱状態だったな。朝、上司に叩き起こされて、『反乱軍がくるかもしれんで、拳銃を持っていけ』と言われてな。
何も聞かされないまま、急いで陸軍省の警備にあたって、その後は皇居周辺に転戦したんだが、終わったもんで、帰ってきたというところだ。反乱軍の大将が兵隊を連れて暴れ込んだという詳細を聞いたのは全てが終わったあとだったが…、まあありゃわずかな日数の出来事だったな」