漫画の題材に「ハラスメント」を選んだ理由
――なぜ今回、「ハラスメント」を漫画のテーマに選ばれたのでしょうか。
はやかわけんじ(以下同) この漫画は、「作者のはやかわけんじが読みたい漫画」ではなく、読者のために描こうと思って企画をスタートさせました。ハラスメントは会社だけでなく、世の中のどの場面にも溢れていることであり、テーマにしやすいと思ったんです。
それと同時に、この作品の監修をしてくださっている公認心理師・社内カウンセラーの柊イワシさんは、僕の大学時代の先輩なんですが、気軽に話を聞きやすいなどご縁を感じたのも大きかったです。
――これまでは、どのような作品を描いてこられたんですか?
僕はアクションやバイオレンスものが大好きで、そのような作品を中心に描いてきました。一見、今作のハラスメントとは繋がらないように思われますが、映画や漫画における暴力シーンっていうのは、その場に人間関係が成立しているから面白いんですよね。
殴る側の理由や殴られる側が痛い理由、辛い理由がしっかり描かれているからこそ、良質なエンターテインメントとして成立する。だから今作で「ハラスメント」を描くうえで、自分が今まで研究してきたことも活かせるし、描いているものとしては、あまり変わらないと思っています。
――コミックス1巻では、登場人物の感情描写やハラスメント事案がとてもリアルでしたが、描くうえでどのような準備をされたんですか。
僕は社会人ではありますが、会社員経験はゼロに等しいので、打合せの段階で編集者からハラスメントのお題をまず頂いています。
ただ1話目は僕から「掴みとしてセクハラがいい」と提案し、監修の柊さんにセクハラ事例を個人情報なしで取材して、いくつか集めた事例の中から編集者と「これ描けるんじゃない?」「この前こんな事件があったよね」と話し合いながらストーリーを膨らまして描いています。