セクハラ被害者に対して生まれる誤解
――作中では、人事の役割やあらゆるハラスメントに対しての定義付けがしっかりされていて、とても勉強になりました。ハラスメントを扱ううえで注意した点やこだわった部分などありますか。
毎回すごく気を付けていて、そこは監修に携わっている専門家の柊さんに逐一チェックしてもらっています。僕は流れや勢いとか物語上必要だと思ったところを描いていき、ネーム(下書き)の段階で柊さんにファクトチェックしてもらい、そのうえで表現や絵がちゃんと入った状態の完成版も柊さんに最終チェックしてもらうという感じで、かなり気を付けています。
――具体的に、はやかわさんから提案した第1話の「セクハラ」の話ではどのような点をこだわりましたか。
1話に関しては、セクハラを受けた女性に「彼氏がいる」という表現は、絶対にしたくないなと思いました。「彼氏がいるからイケメンのアプローチを断ったんじゃないか」という見方をされるのが、一番嫌だったからです。
彼氏がいようがいまいが、たとえ加害者側がイケメンで仕事ができる男であっても、セクハラは精神的苦痛を与えうるものだし、そういう誤解が生まれるのが一番嫌だったので、被害者のバックボーンとして、彼氏やパートナーがいるという表現は絶対に避けました。
特に連載している『グランドジャンプ』の読者層ってほとんど男性なので、男性側からよくある「彼氏いないんだし、イケメンなんだから付き合っちゃえよ」みたいな見方は避けたくて、気を配りながら描きました。
――その点は、監修の柊さんからのご意見ではなく、はやかわさん自身から生まれた問題意識だったんですか?
そうですね。これは物語の仕組みの話なので、僕が「#Me Too運動」以降の世の中の潮流などを見てきた結果、出したやり方です。
取材・文/木下未希