まだ進化するネットスーパー

かなり長い間、「ネットスーパーは難しい、儲からない」と言われ続けてきました。しかし近年、黒字化する企業も現れています。損益を明らかにしない企業が多い中、大手食品スーパーの西友は、2024年8月のプレスリリースの中で「店舗型ネットスーパーは、現時点で全店で黒字化を達成」していると表明しました。ネットスーパーの世界では何が起きているのでしょうか。

大手食品スーパーの西友 (写真/shutterstock)
大手食品スーパーの西友 (写真/shutterstock)
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実は、リアル店舗で買い物がしづらくなったコロナ禍は、食品ECが拡大する機会になりました。米国や中国のような非連続的な拡大とまではいきませんでしたが、巣ごもり消費は購買層に広がりをもたらしたのです。

まず、新たな利用者層として、高齢者がネットスーパーを利用し始めたのが大きな出来事でした。いや、あえて言うなら、「利用できるようになった」と思わせる興味深いお話を、あるスーパーで伺いました。

ステイ・ホームで家族と過ごす時間が長くなったことで、家族からスマホの使い方を教えてもらったり、遠く離れた都会に住む子どもたちと連絡を取るためにスマホを使えるようになったりした高齢が多くいたそうです。そうしてITリテラシーの課題を解決した高齢者が、食品ECの利用者としても現れたのでした。

では、メイン顧客である40代共働き世帯や若年層にとっては、何が利用上の課題だったのでしょうか?価格や送料にまつわるコスト、配送サービスの質は常に問題になりますが、実は、買い物をする上での基本的なことが1つあります。それは、“モノに対する信頼性”を獲得することでした。

とくに生鮮食品を選ぶ際には、ひとつひとつの商品を手に取ってみないとそれぞれの良し悪しがわかりません。しかしネットではそれができません。ネットスーパーで送られてきた生鮮品が傷んでいたり、満足できない大きさだったりすると残念な気持ちになり、もう日常使いしたくなくなります。