1987年5月1日に『リンダリンダ』で衝撃のメジャーデビュー
1980年代の初め頃、「ザ・コーツ」という、東京モッズシーンのバンドで活動していた甲本ヒロト(以下、ヒロト)と、同じくモッズバンドの「ザ・ブレイカーズ」の真島昌利(以下、マーシー)が出会って意気投合。「ザ・ブルーハーツ」(以下、ブルーハーツ)が結成されたのは、1985年のことだった。
メジャーデビュー前からブルーハーツは話題を集め、1987年2月にインディーズ・レーベルから『人にやさしく』をリリース。
その後のオリジナル・アルバムに収録されなかったにもかかわらず、今でもブルーハーツの中で1位2位を争うほどの人気曲だ。この曲は、ヒロトがザ・コーツ時代から『がんばれのうた』として演奏していた。
そして、1987年5月1日に『リンダリンダ』で衝撃のメジャーデビューを果たし、3週間後には1stアルバム『THE BLUE HEARTS』がリリースされた。
一般的に、バンド名をタイトルに名付けたアルバムというのは、バンドが自信を持って送り出す一枚であることが多い。また、バンドのメッセージやコンセプト、音楽スタイルなど、バンドの特徴を最も表しているもので、後に代表作になるであろう、という意味合いも強いだろう。
ブルーハーツの『THE BLUE HEARTS』も例に漏れず、まさにその様なアルバムと言える。何よりも、ヒロトとマーシーが紡ぎ出す、その生々しいメッセージが当時多くの若者の心を捉えた。
どの曲も歌詞やメッセージがストレートで、パンク・スピリットに溢れている。生きにくさを叫び、社会や大人たちに対する反骨精神をむき出しにした。
また、ザ・コーツ時代からヒロトが歌っていた『少年の詩』や『NO NO NO』も、アルバムに収録された。
『リンダリンダ』の「ドブネズミみたいに美しくなりたい」というような突拍子もない歌詞は、強いインパクトと同時に多くの若者の共感を呼んだ。
それは、明るく華やかなバブルの時代にありながら、実際は閉塞感を感じていた若者が多かったということではないだろうか。
矛盾だらけの社会に対して、「クソッタレ」と大人たちに毒づくマーシーやヒロトの言葉は、多くの若者の悶々とした心に風穴を開けてくれたのだ。