社会的劣等感が及ぼす家庭への影響

父から性暴力を受けた、という報告は38件ある。

実父による性暴力が26件、継父による性暴力が10件、祖父による(父親不在)性暴力が2件報告されている。

加害者の動機として、①子どもへの絶対的支配を目的とした性暴力、②反発する子への制裁としての性暴力、③飲酒など自制心が働かない状況における性暴力の3つに分類できる。

①子どもへの絶対的支配を目的とした性暴力(10件)

峰なゆか氏の自伝的漫画『AV女優ちゃん4』(扶桑社、2023)には、「黒ギャルちゃん」という小さい頃から父親が大好きな少女が中学生の頃、母親が家を出たことをきっかけに、父親と恋人のようにセックスをする話が掲載されている。父親は娘との性交に飽きると、友人から金を取って娘と性交させるのである。この時、初めて少女は父親の加害性と自ら受けた被害を認識するのである。

子の親への愛情を利用した性暴力は、子どもが被害を認識していなかったり、認識するまでに時間を要している。

実父の子どもを5人出産した29歳女性による尊属殺人が刑法に及ぼしたもの「愛情を利用」「社会的な劣等感のストレスの捌け口」…近親性交の闇_2

②反発する子への制裁としての性暴力(10件)

言葉で言うことを聞かない子どもを屈服させるために性暴力を用いるケースである。性暴力を歴史的に、国家による拷問で用いてきた国もある。屈辱を与えることは、単純な暴行以上に自尊心を破壊し、服従させることができるからである。