福原愛も連れ去り加害者に

「子どもの連れ去り」が広く知られるきっかけとなったのが、2022年に報じられた元卓球選手の福原愛氏の事案だ。

福原愛氏は、台湾人の夫と離婚した際、共同親権で主な監護者を父親とし、定期的な交流の取り決めが交わされたが、2022年の面会交流時に福原氏が子どもを約束通り返そうとしなかったことでドロ沼化。裁判所から子の引渡し保全命令が出されても従わなかったため、刑事告訴されたことは日台メディアでも大きく報じられた。

タレントの菊川怜氏の「連れ去り」も「週刊文春」(24年11月14日号)が報じた。同誌によると、菊川氏は夫に何も告げず、子どもと家を出たため、夫は警察に相談。一方の親が連れ去る行為は未成年者誘拐罪に抵触する疑いがあるとして被害届が受理されたという。その後、夫婦は協議離婚が成立。

かつて日本のドラマでは、書き置き一つで夫に相談なく母親が子供を連れて家を出るシーンが珍しくなかったが、実は「誘拐罪」として法に抵触するかもしれない行為なのだ。気づかないうちに被疑者になりかねないため、注意が必要だ。

人権問題に詳しい弁護士の紀藤正樹氏もシンポジウムでこう指摘した。

「日本の現在の司法に絶望感がある。後見機能を果たすべき家庭裁判所が後見機能を果たしていない。ルールをしっかり定めないと現場も変わらないであろう。子の利益の観点からは、偽装DVがあり得ることを考慮したルール作りも必要」(紀藤氏)

施行まで1年を切った共同親権の民法改正…議論のカギとなる「DV被害の有無」と、「子どもの連れ去り」の現実_3
すべての画像を見る

重要なガイドライン制定、今後の展望は?

「いま法務省を中心に、海外の事例を参考にしながらサンプルを作っていただいている。改正後には、議員連盟として、離婚後も父母双方が同様に関わることのできる共同養育を保証できるよう提言していきたい」(三谷氏)

3組に1組が離婚する時代。未成年の子を持つ親にとって、明日は我が身となる可能性がある問題だ。実際にDV被害があるかどうかを適切に判断し、被害者を保護しながら、一方では不当な「子どもの連れ去り」を無くす運用ができるか。

何よりも重要視されるべきは子どもである。DV加害者の暴力から守られなければならないし、一方で同居していない方の親に会う権利も保障されなくてはいけない。石破政権はどのような道筋をつけるのか。

取材・文/小松沙紀