仕事(=ジョブ)に値段をつけることは不可能
本来のジョブ型は、「仕事(ジョブ)に値段」をつけ、その仕事を遂行する人が誰であろうと同じ報酬を払う仕組みです。
他方、メンバーシップ型は、能力給・年功給・成果給・属人給などにより、「人に値段」をつけ、どんな仕事を行っていようとも同じ報酬を払う仕組みです。つまり、報酬を支払う対象を「仕事」(=ジョブ)にするか、「人」にするかが、報酬制度の最初の大きな分岐点となるのです。
さて、ここで問題です。はたして、仕事(ジョブ)に値段をつけることはできるのでしょうか。
たとえば、サッカーでセンターフォワードはいくら、ゴールキーパーはいくらと値段をつけているチームはありません。野球でもピッチャーはいくら、4番バッターはいくらと決めているチームはありません。他のスポーツも同様です。
大谷翔平選手、リオネル・メッシ選手など、結局はポジションではなく、その人材そのものに値段をつけているのがプロスポーツ界の常識です。
ビジネスにおいても、たとえば、研修を企画・計画し、実行する仕事に値段をつけることができるでしょうか。人的資本経営で、人材への投資を重視している現在と、それ以前では、その仕事の価値は大きく違うでしょう。
仕事の価値は、社会環境や経営戦略などによっても、日々刻々と変わるものです。
ましてVUCA(市場やテクノロジーの変化が激しく予測が困難)の時代です。環境変化が激しい中、その都度ジョブに値段をつけるなどということは不可能です。
ジョブ型のジョブ内容を規定する「ジョブディスクリプション」を書いているうちに環境変化が進み、そのジョブの価値が上がったり下がったりして、内容が意味をなさない状況に陥ってしまう。そんな笑えない状況に陥る可能性も十分にあるのです。