副業・兼業を求める表の理由と裏の理由
ひと昔前までは、大半の企業で「副業・兼業」は禁止でした。本業で毎日夜遅くまで残業し、土日も休日出勤や接待ゴルフだった時代には、副業や兼業をする時間はありませんでした。そのため、働く個人も、副業・兼業をしたいなどとは、つゆほども望んでいませんでした。
こうした意識が大きく変わったのは、労働時間が短縮されたからでしょう。
かつては1日8時間労働で、月20日出勤、12カ月間働くと、年1920時間になります。
日本の現在の年間労働時間は約1600時間ですから、以前よりも300時間以上少なくなったことになります。もちろん、パートタイマーや短時間正社員なども含めての数字なので、一般的な正社員に限れば、1600時間以上働いている人が多いとは思います。
いずれにしても、労働時間の短縮によって、本業とは別の副業や兼業ができる時間が、近年、働く個人に生まれたことは間違いありません。
こうした時間を活用して、本業以外の仕事をすることにより、スキルアップを図ったり、仕事の幅や人脈を広げたり、地域に貢献したりしたいというニーズが働く個人に生まれます。
これが、働く個人が勤務先の企業に副業や兼業の許可を求める表向きの理由だとしたら、残業代や休日出勤手当などがもらえなくなり、本業以外でも稼ぎたい、稼がないと生活が苦しいという人が一定数いるのも現実です。
それを裏付けるのが、スキマ時間にアルバイトができるマッチングサービスの隆盛です。
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