20年前、すでにテレビとネットの融合を考えた

僕が20年前、フジと業務提携を結んだ頃に思い描いていたのは当時、最先端のサービスだった「iモード」に関するビジネスだった。

もともとライブドアは、テレビ東京のiモードサイトを作っていた。毎週木曜日の朝になると、担当者と一緒に虎ノ門のテレビ東京に行って、文句を言われながらも仕事をしていた懐かしい思い出があるのだが、それでも1万人だった会員数をたった1年で10万人に増やした実績がある。

「こんなに会員数が増えるのか……」

当時の僕には確かな手ごたえがあった。

発注側のテレ東子会社にはまったく協力姿勢がなく、本体のテレ東に対する発言力もなかったので、番組でiモードサイトの宣伝などはほとんどしてくれなかった。

それにもかかわらず、これだけ会員数が伸びるということは、テレ東よりはるかに強力なコンテンツを持つフジが一丸となってiモードを推進させたら、数百万人、いや数千万人の会員を獲得できるのではないか――僕はそう考えていたのだ。

NTTドコモが提供していたiモード
NTTドコモが提供していたiモード
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もちろん、当時のコンテンツと言えば携帯の着メロだったり、テキストメッセージやちょっとした写真程度のものだったが、いずれ技術革新が訪れ、何らかのデバイスが開発されて、手軽に動画を見ることができるようになることは分かっていた。

実際、2008年にiPhone が発売されスマホの時代が到来すると、一気に動画の時代に突入した。

僕が刑務所に入る前(2011年)まではまだ、スマホを持っている人は少なかったと記憶しているが、2年後に仮釈放され社会復帰したときには誰もがスマホを使うようになっており、急速な普及を実感した覚えがある。

ここで重要なことは「なぜコンテンツを流すのか」という事業の目的だ。僕が考えていたその目的は、ユーザーの決済アカウントを取るということだった。

ライブドアは当時、証券も持っていたし銀行の業務にも参入しようとしていたところで、ひととおりの金融サービスを揃えていた。コンテンツは、決済アカウントを取るための手段だったのである。

無料で見るだけだったテレビから、ネットの世界にお客さんを連れてきて、小口決済のお金が落ちる形にする。

フジテレビにはいくらでも強いコンテンツがあるのだから、これは必ず成功する自信があったし、放送とネットが連携するメリットは非常に大きかったといまでも思う。

#2 に続く

文/堀江貴文 写真/Shutterstock

フジテレビの正体
堀江貴文
フジテレビの正体
2025/5/30
1,540円(税込)
200ページ
ISBN: 978-4299066794
まだまだ話題の絶えないフジテレビ。20年前の2005年、当時ライブドア社長を務めていた堀江貴文氏が、同社株を大量保有するニッポン放送を買収しようとし注目を集めました。現在フジに対してXほかネットで活発に発言し、再び株を購入し株主総会に出ると公言するなど動きを見せている堀江氏が「日枝氏について」「メディアという事業」「歪んだ株価と組織構造」など赤裸々に語ります。
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