転売ヤー優遇となった抽選販売
しかし、そもそもこうした転売品は、任天堂による積極的な転売対策を、どのようにすり抜けて調達されたのだろうか。
発売日前には、任天堂の公式ストア以外の複数の販売チャネルでも、抽選販売が行なわれていた。無論、各販売チャネルも、それぞれの抽選販売に独自の応募条件を設け、転売対策を講じている。
例えばビックカメラでは、「提携クレジットカード会員であること、かつ2023年4月1日から2025年3月31日までの間に合計30,000円以上の購入歴があること」(第1回抽選時)、エディオンは「エディオンカード会員または期間中の新規会員登録が必要」、ジョーシンは「ジョーシンカード会員または上級会員であること」などだ。
筆者は、このように、それぞれの販売チャネルが独自の条件下で抽選販売を行なったことは、転売対策としては悪手だったと見ている。
つまり、多くの販売チャネルは、普段から店舗を利用する「得意客」を優先する抽選販売を行なったわけだが、皮肉なことに常習的転売ヤーの多くも、家電チェーンやオンラインストアの得意客なのだ。
しかも彼らは、知人や家族の名義を使って複数の会員アカウントを開設し、それぞれで購入履歴を積み上げている。転売市場で高値がつくような特定商品ばかりを購入していると、転売ヤーと認定されて「出禁」とされるリスクがあるからだ。
つまり、一人の常習的転売ヤーにつき、それぞれの小売業者による抽選販売で2、3口、合計10口20口と多重応募をすることができる。
一方で、複数の家電量販店チェーンの提携クレジットカード会員や上級会員になっている一般消費者は限られる。ここで転売ヤーと一般消費者の「機会の不均等」が発生し、抽選販売から転売市場に流れる在庫の割合が、結果として高まってしまったのだ。