CtoCからの転売ヤー排除は得策なのか 

もうひとつ、筆者が注目しているのは、各CtoCプラットフォームとの合意による不正出品の防止が、転売市場にどのような影響を与えるのかという点だ。

誰でも転売を行なうことができるCtoCプラットフォームが、問題の温床になっていることについては異論はない。

しかし、誰でも転売ができるという状況は、同時に転売市場の自由競争を促し、価格の釣り上げなどを困難にしてきたことも事実だ。

ところが、CtoCプラットフォームから転売ヤーが締め出されれば、前述のとおりBtoCプラットフォームのオンラインストアほか、独自の販路を持っている者のみが、転売可能になる。

初年度のスイッチ2予想販売数量は1500万台と発表されている
初年度のスイッチ2予想販売数量は1500万台と発表されている
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プレイヤーが限られれば、転売市場の競争は不完全になり、スイッチ2の価格の釣り上げが容易になる可能性もある。 

例えば、CtoCプラットフォームで不正出品対策が強化されたことによって販路を失った個人転売ヤーから、独自の販路を持つ業者がスイッチ2を買い取り、3倍、4倍の価格で転売するというケースも想定されるのではないだろうか。

CtoCプラットフォームから転売ヤーを締め出すのであれば、同時にBtoCによる転売行為に対しても策を講じなければ片手落ちであり、転売問題の根本解決には至らないと筆者は思うのだ。

今から30年ほど前、注目の転売品といえばナイキのエアマックスだった。

しかし、CtoCプラットフォームが現在ほど普及していなかった当時、独自の販路を持つ限られた集団によって買い占めと転売が行なわれており、彼らは互いにカルテルを結んで価格を釣り上げた。そうしたなか、定価1万円台の商品が、20万円以上の価格で転売されていたモデルもある。

BtoCによる転売を放置したままでのCtoC転売規制は、そうした時代に逆戻りすることに繋がりかねないのではないだろうか。

一方で、結果はどうなるにせよ、任天堂の転売ヤーとの対決姿勢に世間の賞賛が集まっていること自体は、社会として良いことだ。今後、転売ヤーに無策な販売者は、今回の任天堂の対応と比較され、顧客の支持を失っていくリスクに晒されることになるだろう。

文/奥窪優木 写真/Shutterstock