苗字の違う両親に育てられた子どもはかわいそうなのか?
今回、事実婚を選択する夫婦を取材したなかで最も多かった理由は「改姓のための手続きがおっくう」「一人っ子なので、自分が改姓すると家が途絶える」など、改姓を拒むものだった。
現在も活発に議論されている選択的夫婦別姓で問題点としてあがるのは、両親の苗字が異なると「子どもがかわいそう」「子どもがいやな思いをする」というもの。
では、実際に夫婦別姓の両親に育てられた子どもはどのような気持ちなのか。なにか弊害があるのか。別姓夫婦に育てられたカヤコさんは言う。
「確かに、小学生の頃に従兄弟に『なんで父親と苗字が違うの?』と尋ねられ、面食らったことはあります。でも、父と母の苗字が違うことを友人たちが知る場面はほとんどありませんでした。ですから、『両親が同じ苗字だったら良かったのに』と思ったことも、指摘されて嫌な思いをしたこともありません。
それは、両親の仲が良く、家庭が円満だったから言えることなのかもしれません。大切なのは姓ではなく、家族間で良好な関係性を築くこと。両親が別姓でもそれぞれの家族の在り方が尊重される社会であってほしいです」
筆者も、小学2年時に両親の離婚により改姓を経験した。友人たちから改姓の理由を問われ、子どもの無邪気さゆえ心ない言葉をかけてくる者もいた。
その経験から言えるのは、むしろ、結婚当初から別姓である方が、両親の離婚時に改姓する必要はなく、子どもの心を守ることにつながる可能性があるのではないか。
ただし、同様の法改正により事実婚の増えたスウェーデンでは離婚率が上がり続けている前例があるので、必ずしも子どものためになるとは言えないのかもしれない。
事実婚、法律婚、今後認められる可能性のある選択的夫婦別姓。いずれにせよ、メリット、デメリットを考慮した上で慎重に選択したい。
取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/Shutterstock