都内最大級の自販機オーナー「どうぞ、なんでも聞いて下さい!」
記者がかけたのは都内最大級のえっち本販売機小屋の販売機に「業者」として掲示されていた番号である。
3コールほどで男性が出て、取材の意向を伝えると「1年に1回くらい、このようなご連絡が来ます。どうぞ、なんでも聞いて下さい!」と意外にも若々しく爽やかな声の50代男性オーナーが対応してくれた。
「実は、八王子の小屋は元々『こっそり堂』という、関東、東海、九州地方に2020年頃まで1000台以上もの自販機を所有していたグループが運営していたんです。でもそのグループが愛知県青少年保護育成条例違反(有害図書などの収納)で摘発され不起訴となりましたが、その後、私が引き継いだという形です」
オーナーによれば「えっち本販売業者は今は全国で10人前後だと思います」と言う。
「私もこの業者を始めて22年になりますが、八王子をはじめ葛飾や関東近県、中部、東北エリアなど全国15か所の販売機の運営をしています。月に1回、内容物の仕入れをして、毎月1回は15か所の販売機に商品を補充しに行きます」
毎月1回必ず商品を補充しに行くということは、売り上げもそこそこ安定しているのだろうか。すべての自販機でどのくらいの売り上げかというと「数字は言えませんが、なんとか暮らしが成り立つ程度」だと言う。
「私はだいたい、商品の補充は夜に行なうのですが、意外にも20代くらいの男性や女性をお見かけすることもあります。女性が『ねえ、いいの、ない?』と聞いてきたことがあって、僕はイジワルしてわざと『いいのって、なんのことですか?』なんて言っちゃったこともありますけどね(笑)」
商品が2、3年前に発刊されたものなどビミョーに古いのはなぜなのか。
「月1で私が自ら問屋に仕入れているのですが、それらがすべて売れ残った雑誌などだからです。また、なるべくDVD付きじゃないものを探してますよ。こういった本好きの人は映像をほしがらない傾向にあるからですね。かつて本屋で売れ残った本が販売機で買い手がついたら、敗者復活戦のようで嬉しいでしょう。買う人いるの?ってよく聞かれますけど、いまだにアナログなものを求める方はいるんです」
ただもちろん、えっち本販売機ということで街の住民から苦情が入り、対応に追われたことも何度となくあるという。
「PTAを名乗る方から電話がかかってきたり、時には地域の方に撤去してくれと言われ、話し合いの場を持ったこともあります。それでもなんとかこれまで自分が運営してきた販売機においては撤去に追い込まれたことはありません」
なぜ、そんなことまであって自販機を続けていくのか。オーナーはこう答えた。
「こういった自販機は街の景観にとっては確かによくないかもしれない。でもネットとか見えない所で危ない何かを購入できてしまう時代だからこそ、見える所で買える場を保つのは大事なのではないか」
自販機は今日もポツンと立っている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班