若者はソウルへ穴を埋める外国人労働者
アジア各国の労働者の出稼ぎ先として存在感を高める韓国。背景には、世界でも異例の速さで進む「超少子化」と働き手の不足がある。
韓国では今、外国人労働者に対して永住への道も広げようとしている。「仕事がきつい」といったイメージから韓国人が敬遠しがちな造船業界に限らず、幅広い分野でアジアから労働者を引き込むことが目的だ。
韓国には04年から「雇用許可制」という仕組みがある。政府管理のもとで外国人の労働者の受け入れを進めることが特徴だ。
その雇用許可制での受け入れが急速に拡大している。毎年、上限の人数を設定しており、22年は約7万人だったが、23年は12万人に増やした。さらに24年は16万5千人まで拡大し、人口が約2倍ある日本の技能実習制度の入国者数とほぼ同規模になった。
製造業や農畜産業、建設業などに加えて、「韓国料理店の厨房補助」で24年から試験導入する飲食店や、林業などにも対象を広げつつある。
ソウル近郊で、20年以上続く肉料理の店を営む男性(60)もアジアからの外国人労働者を雇うことにした。地元の常連客らに親しまれてきたが、ここ数年はいつも店員が足りず、ネットなどに求人広告を出しても、「まったく反応が得られない」のだという。タッチパネルの注文装置を入れるなどして省力化を図っているが、限界がある。
記者の取材に対し、男性は「韓国人が働いてくれないなら、店を続けていくには外国人を雇うしかない。来てくれれば、そりゃあ助かりますよ」と語った。
雇用許可制で韓国に滞在できるのは、最長4年10カ月を2回まで。ただ、経験を積んで一定の技能を身につけるといった条件を満たせば「熟練技能人材」という別の在留資格を得られ、永住への道も開ける。
23年にはこの資格をより得やすくし、人数の上限も22年の2千人から23年は3万5千人へと大幅に増やした。人手が足りない企業からの強い要望を受けたものだ。韓国は大学進学率が7割ほどに達するなど高学歴化が進んでおり、若者がめざすのは、もっぱらソウルに本社を置く名の知られた大企業だ。
一方で中小企業や地方の工場などは人材確保に苦しんでいる。「韓国の若者は地方の工場で働いてくれないよ」(地方の中小企業幹部)との嘆きはよく聞かれるものだ。