「株を買う」よりもさらに儲かるインチキな方法
ジャックの例だとこうなる。マイクロソフトの株式を100万ドル分買ったうえで、さらにジルに10万ドルを支払って、1年以内に今日と同じ金額(100万ドル)で同じだけのマイクロソフトの株式をジルがジャックに売ることを保証する。
彼らの用語にすると、ジャックはジルから「1年以内に今日と同じ株価でマイクロソフトの株式を買うオプション」を買ったのである。
なぜそんなことをするのか? もし、この先の12カ月のあいだにマイクロソフトの株価がたとえば4割上がったら、ジャックはふたつ得をする。まず、すでに買っていたマイクロソフト株で40万ドルの利益が発生する。加えて、前年の低い株価でマイクロソフト株をさらに買い入れることのできるオプションから、40万ドルの利益が発生する。
ジャックはマイクロソフト株を実際に買う必要はなく、そのオプションをだれかに40万ドルで売却できる。ジルにオプション代として支払った10万ドルを差し引くと、ジャックの利益は70万ドルになる。100万ドルでマイクロソフト株を買うだけのリターン(40パーセント)と比べて、110万ドルを使った投資のリターンははるかに高くなる(約64パーセント)。
何年間も継続して強気相場が続き、なにもかも値上がりしていたウォール街で、とめどない欲望の連鎖(オリバー・ストーン監督の映画『ウォール街』にその様子が再現されている)がジルやジャックをさらに過激なアイデアへと導いた。
そもそも株を買わなくてもいいのでは? オプションだけ買っていればいいのでは?
彼らはこう考えた。もしジャックが110万ドルをすべて、「マイクロソフト株を今日の株価で来年買えるオプション」だけに使ったらどうなる?
株価が4割上がれば、純利潤はなんと330万ドルになる。投資リターンは驚きの300パーセント!
これを見たジャックは全振りすることに決めた。カネを借りられるだけ借りて、ジルからこのオプションを買おう!
ジルは、自分が売ったオプションでジャックが儲けているのを見て、彼の真似をすることに決めた。ジャックから受け取ったカネを使い、さらにカネを借り入れて、ほかのトレーダーから同じようなオプションを買い入れたのだ。