母への感謝と子どもの今後 

 

高IQをいかんなく発揮して名門校に入り、音楽においては小学校高学年で吹奏楽の全国大会に出場するなど、多岐にわたる才能を感じさせるみぞのさん。一方で、不登校や引きこもりや家庭内暴力など苦境にあえぐ時間も長かった半生を振り返る。

「学生時代、いろんなことを人よりも高いレベルでこなせていた自覚はあります。もしもあのとき、がんばり続けたらエリートになれたのかもと思うことは、正直あります。

……でも、疲れちゃったんです。あるとき、心がぽっきりと折れてしまって。人に期待されることから逃げたくなってしまったんですよね」

バーで行う生誕祭の宣材写真
バーで行う生誕祭の宣材写真
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いいときも悪いときも傍で見守ってくれた母親には、こんな感情があるという。

「母は私が引きこもったときも、住む家を用意してくれて、一生働かなくても大丈夫なくらいの蓄えを築いてくれたようです。もちろん、私はいずれは大学で学んで社会に出て、働ければとは思っていましたが、その気持ちがうれしいですよね。

母が私のために、あの父に抗って離婚という選択をしてくれたことも愛情を感じます。今は私も一児の母なので、そんなふうに子どもを守れるようになりたいですね」

人は器用貧乏、宝の持ち腐れと笑うかもしれない。けれども回り道の末にたどり着いた場所で、みぞのさんは人生に欠かせない愛情の手触りを感じ始めている。

取材・文/黒島暁生 写真/本人提供