退職代行サービスによって前に歩み出す人々の存在 

そんな中野さんは5月中旬からすでに別の会社で働き始める予定だという。新卒で入った企業をたった1か月で退職したとあっては、転職活動をする上で不利に働きそうだが、中野さんは正直に前職の業務内容が自分に合わず、「長期的なキャリアとして考えられない」ということを伝えていた。すると、転職活動は思いのほか、スムーズに進んだという。

(画像はイメージです/Shutterstock)
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退職代行サービスに助けられたのは、中野さんだけではない。日々、モームリには、利用した若手社員から以下のような感謝の声が相次いでいるという。

「上司によるパワハラで精神を病み毎日泣いていましたが、自分から辞めたいと言える訳もなく途方に暮れていました。そんな時にモームリという逃げ道があったおかげで自分が完全にダメになる前に退職することができました。」(女性・金融・保険業)

「会社をやめるときの1つの手段として、退職代行サービスの存在がより多くの方に知られ、利用されることで、常識外のことを強要する企業が減っていくよう祈ります」(男性・介護関連)

「変な企業に勤めてしまって辞められない状況になっても、退職代行サービスがあると思うと心強く、今後も他の企業に挑戦する恐怖心が薄れました」(女性・​医療関連​)

こうした近年の傾向について、モームリを運営する株式会社アルバトロスの担当者に話を聞いた。

「若手社員による退職代行の利用について、賛否があることは承知しています。依頼者の一方的な自己都合による退職も実際にございます。しかし、「退職代行があるからこそ、恐れずに次のキャリアに挑戦できる」という声があるのも事実です。

キャリアのスタート地点にいる若手にとって、「やめたいのにやめられない」という状況が長引くことは、大きなタイムロスであり、貴重な成長機会を逃す要因にもなり得ます。

そうしたケースにおいて、第三者を介したスムーズな退職は、本人にとっての前向きな一歩であると同時に、結果的に雇用の流動性や人材の最適配置を促進する効果もあると考えています。」(株式会社アルバトロス・担当者)

​​退職代行という選択は、労働者のための新たなる権利として確立されていくのだろうか。問われているのは退職代行の是非ではなく、離れる権利を認めた上での働きたくなる職場づくりなのではないだろうか。​

取材・文/集英社オンライン編集部