「『学校施設を使えるようにしてほしい』という声はよく聞きます」

――吹奏楽部が地域クラブ活動に移行する場合に、他にどのような課題がありますか。

吹奏楽はどうしてもお金がかかります。もし「地域クラブ活動」という形で新たに始めようとすると、楽器や楽譜などを購入する費用や、音が出せる練習場所も必要になります。すべて揃うと12種類ある楽器の指導を誰が行なうのかも課題です。

現状、地域クラブ活動に移行したところはまだそこまで多くはありませんが、移行したところでも、学校の楽器を使わせてもらったり、地域の施設を優先して使えるようにするなど、工夫しているところもあるようです。

そういった中、やはり学校の楽器を使い、移動せずに学校で活動できないかを模索している自治体も多いようです。実際、先生たちからは「学校施設を使えるようにしてほしい」という声をよく聞きます。

写真はイメージです(PhotoACより)
写真はイメージです(PhotoACより)

――そもそも、学校の音楽室は簡単に使用できないものなのでしょうか?

校庭や体育館、音楽室を地域の団体に開放している学校もありますが、音楽室には楽器や備品がたくさんありますし、校舎の中にあるため、職員室など他の教室も含めてセキュリティ対策をしなければなりません。

そうでなければ教員など信頼できる人が管理で立ち会うなど、何らかの対策をしなければ、外部の運営となる地域クラブは音楽室を使用できないでしょう。千葉県柏市は地域クラブのために市内の中学校のセキュリティ工事をしたそうです。

――学校の中に部活動として存在しなくなると、今後、子どもたちが吹奏楽や楽器に触れる機会が減ってしまうことが懸念されますが、いかがですか。

確かに、吹奏楽部が学校から減少すると、楽器を間近に見たり聴いたりする機会は減る可能性がありますね。

ただこれまでにも、中学校の吹奏楽部が小学校に出前演奏に行ったり、地域のお祭りで演奏したり、といった活動が行なわれているので、子どもが吹奏楽に触れるきっかけづくりができれば、中学入学後に「吹奏楽をやってみたい」というモチベーションにつながると思います。

プロの吹奏楽団も、学校に出張演奏に行ったり、講習会を行なったりするなど、さまざまなアプローチをしています。『ドラクエ』などのゲーム音楽を取り上げた演奏会も多く開催され、吹奏楽の裾野を広げてくれています。

あとはメディアの影響も大きいです。過去には映画『スウィングガールズ』が人気に火をつけてくれましたし、今もバラエティ番組『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』の「吹奏楽の旅」新シリーズが始まり、編集部のまわりでも注目している人が多いです。

写真はイメージです(PhotoACより)
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