スポーツドリンク持参を許可する学校も
全国的に広い範囲で熱中症警戒アラートが発表され、対策が呼びかけられるなか、「水の味が苦手で飲めない子ども」が増えていることが懸念されている。なぜこうした現象が起きているのか?
現役の小学校教諭たちは悩ましそうにこう語る。
「水の味が苦手な子どもは年々増えてきているように感じます。中には、家庭で常にジュースやスポーツドリンクを飲んでいる影響で『水は味がしないから嫌だ』という子どももいます。ミネラルウォーターや冷水機の水であれば飲めるけど、冷えていない常温の水や水道水が飲めないという子どもも多いですね。
最近は暑さが厳しく、登下校中に体調不良を起こす児童もいることから、毎日必ずお茶か水を入れた水筒を忘れずに持参するよう保護者や子どもたちに呼びかけています。
スポーツドリンクの持参を許可している学校もあると聞きますが、私が勤務する学校では、禁止されています」(30代女性 東京都小学校教諭)
理由は、小学生児童が500ミリのスポーツドリンクを1本飲むと「1日の目安となる糖分の摂取量を超えてしまうから」だという。さらにこんな理由もあるという。
「スポーツドリンクを常飲すると、虫歯になるリスクが高くなります。それに、スポーツドリンクは酸性のため、金属製の水筒の内側に傷がついていたり、長時間入れっぱなしにしていたりすると、金属成分が溶け出し、中毒症状を引き起こす危険もあると聞きました。
水筒の中の水が足りなくなった子どもや水筒を忘れてきた子どもには、冷水機の水を飲むようにすすめています。『喉がカラカラだけど、水は味が嫌いだから飲みたくない』という児童でも、熱中症の危険性を説明すると、ほとんどの子は冷水機の水を飲んでくれます。
熱中症は命に関わることなので、水が苦手な児童にはとくに、水筒のお茶をできるだけ多めに持参させてほしいです」
別の都内小学校に勤める女性教諭は「コロナの影響もあるでしょう」と語る。
「最近は1クラス2〜3人くらいの子どもが『水の味が苦手で飲めない』と言います。コロナ禍では、感染防止のため、ほとんどの学校で冷水器の水や水道水を飲むことが禁止されていました。
そのため、私が勤務する学校では、夏場だけでなく、年中水筒を持参することが義務づけられていました。コロナ禍以降、水筒持参が当たり前の状態が続いていることも、水が飲めなくなった子どもが増えた理由の一つかと思います。
熱中症がとくに心配なこの時期は、登下校時や休み時間にこまめな水分補給を心がけるように子どもたちにいつも呼びかけています。私が勤務する学校では、スポーツドリンクの持参は禁止されていません。
ただ、スポーツドリンクには、糖分を多く含むものがあり、飲み過ぎると吐き気や腹痛、意識がもうろうとするなど、さまざまな症状が引き起こされることもあるため、とくに低学年の児童には、一気飲みはしないように呼びかけています。
また、熱中症の疑いで保健室を利用した児童のために、保健室にスポーツドリンクと経口補水液を常備しています。養護教諭が必要に応じて、それを飲ませることもあります」