「静かな退職」という権利主張も
では実際、モンスター社員に代表されるように、“従業員が強くなりすぎてしまう現状”はなぜ生まれるのだろうか。「エンカウンター社会保険労務士法人」の社労士に話を聞いた。
「背景には、労使関係の変化も踏まえ、HPやSNSなどでいろんな会社の内情や労働者の権利などの情報にアクセスしやすくなったのも要因としてあげられます。権利主張のプロセスはさておき、有給休暇の取得の主張などは、見方を変えれば“自身の権利を把握している”という意味で、労働者のリテラシーが向上したとも言えます」(社労士、以下同)
そのうえで、従業員側が権利行使を主張する際の注意点についても警鐘を鳴らす。
「労働関係の法律は、労使の関係を良好に保つためのものであり、権利を盾に対立することは本末転倒です。労働契約には権利だけでなく義務も定められていますから、権利の行使と同時に、義務を果たすことも知ってほしいです」
さらに近年は積極的な権利主張だけでなく、「静かな退職」に代表されるような消極的な主張もみられるようになったのが特徴だという。
「『静かな退職』とは熱心な勤務姿勢を捨てて、自分の仕事に対して最低限の責任だけを果たすといったスタンスであり、アメリカで発信され日本でも認知が広がりつつある概念です。
プライベートを犠牲にした働き方をよしとする周囲の同調圧力に屈せず、『最低限のミッションを果たしているのだから、とやかく言われる筋合いはない!』という一種の権利主張の在り方になっています」