「モンスター社員」のトリセツ
あらゆる権利主張を繰り返すモンスター社員に対し、企業側はどのような対応策が求められるのか。
「近年、各種ハラスメント問題に代表されるように、企業側は労働者対応に頭を悩ますことも増えたと思います。そのなかで企業側が要望を受けていれば、社員の問題行動は加速しかねません。労働者の権利主張は適切なのか、行き過ぎた主張ではないか、冷静に判断する必要があります」
よくある事例として、急な退職にも関わらず、有給消化をまとめて消化したり、業務引継ぎに協力する姿勢を一切見せないといった退職代行サービスを利用した突然の退職による問題だ。
「まず大前提として、有給は労働者の希望通り使用されることが求められています。ただし例外として有給の使用が『事業の正常な運営を妨げる場合』には、企業は有給の使用希望時期の見直しを従業員に命じる『時季変更権』を行使することができます」
しかし、仮に時季変更権を行使する合理性が確認できたとしても、退職日が決定している場合、変更させる先の労働日がないので行使できないと企業側が頭を抱えるケースもあるが…。
「対応策として退職金の評価に影響させるなど引継ぎを行なわないことに対するペナルティを検討することもありますが、そのためには何をもって引継ぎをしたとするのか明確にしたうえで就業規則に落とし込むことが必要になります。しかし、引継ぎ内容は業務によって多種多様ですから、完璧に網羅させることは難しいといえるでしょう」
結論、このようなケースでは企業側が労働者の意向を受け入れざるを得ないことが多いというが、このような結末にならないために、「日ごろより有給消化を促すことは有効だ」と社労士は言う。
「有給休暇は本来、『心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障する』ことを目的に制度化されています。有給を消化しやすい職場環境を醸成することで、制度目的にかなった“労働者の健康確保”を実現させるだけでなく、結果として多くの有給を保有させた状態を避けることができます」
モンスター社員への対応は、先手を打って回避できる方法を検討することも重要だという。
「問題社員の言動や業務状況など客観的な記録を取ったり、直属の上司だけで抱えず、組織的な対応に委ねたり、必要なら社労士や弁護士などの専門家に相談するなど連携を図ることも対応策となります」
働き方改革が進むなか、義務を果たさない状態で過度な権利を主張する「モンスター社員」。企業の健全な組織運営を守るためにも、早期対応と各部署や機関との連携が鍵となる。
取材・文/集英社オンライン編集部