「これが最新の『絶望』ですね」
また、同じアジア人として頼れる先輩もいるそうだ。
「大工仲間に、58歳のベトナム人がいるんですよ。16歳でアメリカにやってきて、当時はアジア人差別は今とは比べ物にならないぐらいひどかったそうです。でも彼は、負けたくない、強くなりたいと、カンフーを習うんですね。そのおかげで手も口も出る人間になって、彼をいじめる人間はいなくなったと。
同じアジア人ということで僕のことをすごく気にかけてくれるんですが、いつも『お前も俺のように強くなれ』と言ってくる。あんまり役に立たないアドバイスなんですが(笑)、味方がいるのはありがたいです」
今回のトランプ政権の暴走ぶりは、新たな「絶望」の雲となって、難民さんだけでなくアメリカ全体を覆っているようだ。
「それこそ従来のキラキライメージでは、アメリカ人はホームパーティや仕事場などで気軽に政治の話などを話すように思われていますが、わかりやすい喧嘩のタネですから、実際はそういう場では政治の話はほとんどしません。
でも最近は、不安感を込めて政治の話が話題にのぼっています。このままでいいのだろうか、と。僕としても、アメリカに対してネガティブな話題を上げたSNSはアカウント停止をされるとか、配信者はビザを取り下げるという噂も聞くので、心配です」
そう話す、難民さんは「これが最新の『絶望』ですね」と言った。
取材・文/木原みぎわ
地獄海外難民●1991年生まれ。2019年頃からニューヨーク州に移住し、妻と2人の息子と暮らす。肉体労働(大工)のほか、フードデリバリーやライドシェアなど掛け持ちし日々即日解雇の恐怖を抱えながら働く。うつ病とも闘いつつ、絶望的な毎日をYouTubeにて配信中。2025年1月に初の著書『底辺の大工、ヤバいアメリカで生きのびる』(KADOKAWA)を発売。