キラキラした自慢にまみれた動画は「悪」

巨大なスーパーマーケットに、色とりどりのスイーツ、広々としたリビング…。在米日本人たちがSNSでそういった典型的なアメリカを流し続けることを、難民さんは「悪ですね」と語る。

「これは僕の個人的な意見なんですけど。 キラキラした自慢にまみれた動画を見て、人は羨ましがるじゃないですか。Instagramとかもそうだと思うんですけど。それで羨ましがって自己嫌悪に陥ったり、『あの子は可愛いのに私は可愛くない』みたいに思って整形しようとしたり。

そういう、マウントを取ったり、コンプレックスを煽るようなことをするSNSの風潮が本当に嫌なんです。僕はそれを悪だと思っています。今、SNSで『いいね』の数を隠したりする動きがあるのも、そういう背景があると思います。

むしろ、苦しんでいる事実を見せたほうが、他の人を見て自己嫌悪に陥ることがないんじゃないかと。それに、僕自身、月70万円あっても生活には足りないし、そんな僕の周りのアメリカの現実を知ってもらうことで、『こんな人間もいるんだ。俺もがんばろう』と、安心してもらえたらと思って動画を続けています」

地獄海外難民さんの1か月の生活費(本人提供)
地獄海外難民さんの1か月の生活費(本人提供)

難民さんは常に、「自由の国であるはずのアメリカには自由がなかった」ということに絶望している。

「まず、就労ビザがなかなか下りなくて働けず、本当に困りました。職につけたとしても突然の解雇は日常茶飯事です。人種差別やLGBTQに対する偏見もまだ普通にあるし、アジア人のなかで日本人だけ絶賛されている…なんてことは僕の周りではありません。自己主張もせずにいたら、『ただの身体が小さい使えない人間』としか認識されません。

また、アメリカの『広さ』に憧れている人も多いですが、実際は車がないとどこへも行けない。みんなビュンビュン飛ばしているし、歩道がないところが多いので、徒歩での移動は危険です。しかも、アメリカは銃社会。街中や学校での銃乱射は実際にある事件なので、大げさなようですが、毎日が死と隣り合わせだったりします」

そう話す難民さんだが、もともとはアメリカに対し、ごくごく一般的なイメージを抱いていたという。