上場廃止に追い込まれた東芝

2015年に不適切な会計が発覚した東芝も、その代表的なケースである。同社では長年にわたり計2248億円にのぼる利益の水増しが行われていたことが判明し、金融庁から金融商品取引法にもとづき、73億円余の課徴金納付命令を受けた。

1875年創業で150年近くの歴史を持ち、従業員も連結で10万人を超え、三菱電機と同様に日本を代表する大企業だが2023年末、上場廃止に追い込まれた。

当時、東芝で唱えられた「チャレンジ」という言葉が話題になったように、同社の経営陣が過度に高い収益目標を設定し、達成するよう現場に強く迫った。それが不適切な会計処理を引き起こしたと指摘されている(第三者委員会調査報告書、2015年7月20日)。

上司にモノを「言ったもん負け」ダイハツ工業、三菱電機、東芝など多くの会社の衰退に繋がった官僚制組織の加圧の連鎖_3
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このように官僚制組織特有の、上からの組織的圧力が逃げ場のない現場従業員を追い詰め、不正に走らせたという構図は驚くほど似かよっている。

また官僚制組織の本家本元である官公庁においても、財務省の公文書改竄問題、自衛隊の日報隠蔽問題など〈官僚制型〉の不祥事は続発している。

ただ法律で守られているため、民間企業と違って崩壊・消滅のリスクが小さいだけである。

写真/shutterstock

日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか
太田 肇
日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか
2025年3月17日発売
1,012円(税込)
新書判/224ページ
ISBN: 978-4-08-721354-6

旧ジャニーズ事務所の性加害事件や、ダイハツ、ビッグモーター、三菱電機、東芝などの企業不祥事、自民党の裏金問題、宝塚、大相撲のパワハラ、日大アメフト部の解散、そしてフジテレビ…、近年、日本の名だたる組織が次々と崩壊の危機に直面した。

そこには共通点がある。「目的集団」であるはずの組織が、日本の場合は同時に「共同体」でもあったことだ。

この日本型組織はなぜ今、一斉におかしくなってしまったのか? 日本の組織を改善させる方法はあるのか? 

組織論研究の第一人者が崩壊の原因を分析し、現代に合った組織「新生」の方法を提言する。

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