「言ったもん負け」
さらに、それは自動車業界特有の現象だともいえない。
2023年4月、三菱電機は関係会社5社で計12件の不正がみつかったと発表した。その多くは検査仕様や契約とは異なる検査が行われていたことである(当社関係会社における品質不適切行為に関する調査結果について、2023年4月14日)。
三菱電機では2021年6月、鉄道車両用空調機器などの検査で長年にわたって不正が行われていたことが発覚し、その後の調査で累計197件の不正が発見されていた。不正の直接的な原因を生み出した真因として、内向きな組織風土の存在をあげている。
また調査報告書では「声を上げても助けてくれないという思いは、品質不正を申告することを躊躇わせる理由となった」と指摘し、「言ったもん負け」の文化に対する対処も必要であると提言している(調査委員会調査報告書、2022年10月20日)。
このように同社グループでは検査の不正が繰り返されており、そこにはやはり容易に変えられない官僚制組織の特徴がうかがえる。
そもそも日本での官僚制組織の起源は、明治初期の官庁に遡る。とりわけ公的機関や大企業にとっては組織の原初形態ともいえるものであり、歴史の古い企業ほど確固たる形で存在し続けている。
それだけに伝統的な大企業ほど、官僚制型の組織不祥事が起きるリスクをはらんでいるといえよう。