視聴率は苦戦気味のスタートだが…

『御上先生』では報道された側がその後どのような人生をたどってしまうのかなどが丁寧に描かれ、『キャスター』では阿部演じるキャスター・進藤壮一が「我々報道は真実の奴隷じゃない。真実を追求し、自らの頭で何を伝えるべきかを判断し、そしてその手、その口で責任をもって伝える」と語る場面が印象的だった。

「3作品に共通して描かれているのは、『たとえそれが真実であっても、それを報道すべきかどうか』という問いにあります。現代は誰もが情報発信者となれるSNS時代。これらの作品は、視聴者一人ひとりの情報リテラシーを問いかけています。

視聴者が『これって自分たちの現実にも通じているよね』と、“フィクションを通じてリアルを感じられる”ことで、令和を生きる今の人に刺さることを目指しているのでしょう」

現代は技術の発達によって、巧妙なフェイクニュースが簡単に生成され、デマと憶測、陰謀論が広く飛び交っている。「真実とは何か」をドラマ内で問いかけることによって、視聴者のメディアリテラシーが向上する可能性もあるだろう。

また『恋は闇』では、最近のトレンドである「考察系ドラマ」の要素も盛り込まれている。公式サイトには「万琴の取材メモ」という特設ページがあり、これまでの事件の概要や伏線がまとめられているのも注目ポイントだ。

日本テレビ入口横の巨大アート(撮影/集英社オンライン編集部)
日本テレビ入口横の巨大アート(撮影/集英社オンライン編集部)

初回の平均視聴率は4.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と厳しい滑り出しだが、こうした考察要素がうまく話題になれば、展開次第では視聴率の巻き返しも十分可能と見られている。

「ドラマの製作スタッフは『あなたの番です』『真犯人フラグ』と同じ。どちらも初回放送から序盤の視聴率的はそれほど高くなく、終盤にいくにつれて一気に伸びてきました。

特に『恋は闇』は、日テレ系水曜ドラマ枠1年ぶりの復活作で、ドラマの視聴習慣が一度離れていたところに再度アプローチしています。さらにこの枠では、裏のフジテレビでもドラマを放送している激戦区でもあるので、このくらいの苦戦はある程度織り込み済みでしょう。ここからの“爆発”に期待が高まっています」

事件の裏にある人の想い、報道される側の痛み、そして報道する側の葛藤、『恋は闇』をはじめとする“報道ドラマ”はエンタメを超えて、現代社会そのものを映し出しているのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部