テレビ局批判にもなりかねない内容
『キャスター』は、俳優の阿部寛が型破りなニュースキャスター・進藤壮一役を演じ、テレビ局の報道番組を舞台に、闇に葬られた真実を追求して悪を裁いていく社会派エンターテインメント。
進藤は視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』のテコ入れとしてメインキャスターに抜擢されると、「スクープのないニュース番組はニュース番組ではない」という信念で生ぬるい報道体制を正し、手段を選ばず、独自のルールで取材や調査を行ない、既存のルールはおかまいなしで大スクープを追っていく。
「第1話から報道番組に深く根を張る忖度や堕落したジャーナリズムを映し出し、既存の報道番組を揶揄するような展開がありました。テレビ批判にもなりかねない内容を、TBSの“日曜劇場”という日本ドラマ界のトップ枠で放送したのは地上波ギリギリの攻めた試みとも言えるでしょう」(テレビ局関係者、以下同)
その甲斐あってか、初回の世帯平均視聴率は14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。日曜劇場としては、2023年4月期の福山雅治×大泉洋ドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』以来の初回14%超えの好発進だ。
日曜劇場は前作の『御上先生』も好評でいい数字を記録していたが、『キャスター』との共通点は、どちらも社会派ドラマであることだ。
「『御上先生』のヒットは特にテレビ局では衝撃でした。エリート文科省官僚が進学校の高校教師となり、日本の教育現場での問題点を生徒と一緒に考えるというストーリーでしたが、『こんな地味で真面目なドラマが数字を取るはずない』と思われていたからです。
しかし結果は、全話平均視聴率が10%以上のヒット。SNSなどでも話題となり、社会派ドラマが今の日本で数字を取れることを証明しました」
長らく日本のドラマ界では、医療もの、法廷もの、刑事ものが手堅いとされ、それらの作品が量産されて確かに高い視聴率を記録してきた。
だが最近では視聴者の目が肥えたうえに飽和状態であるため、医療ものでも王道の外科医ではなく、保健室の先生や診断医、法廷ものでも遺産相続に特化した弁護士などかなり細分化されている。