求められる打撃スタイルの変更

しかし、打撃面で衰えが隠せない坂本も、まだまだチームに欠かせない存在であることは間違いない。

昨季は優勝争いが激化する9、10月で勝負強さと、リーグ優勝や日本一を知るベテランとしてのリーダーシップを発揮した。

中でも印象的だったのは1ゲーム差で首位を走る9月23日、2位阪神との甲子園での直接対決だ。

終盤まで0‐0と互いに譲らぬ白熱の展開で、坂本は7回表に決勝打となるタイムリーを放って試合はそのまま1-0で勝利した。坂本も「あの打席で打てなかったら引退も考えないといけない」と語るほど、強い覚悟で臨んだ打席だった。

9月23日の阪神戦で決勝タイムリーを打ちガッツポーズをする坂本(球団公式Facebookより)
9月23日の阪神戦で決勝タイムリーを打ちガッツポーズをする坂本(球団公式Facebookより)

同年のクライマックスシリーズファイナルステージも胸が熱くなるシーンがあった。3位から勝ち上がってきたDeNAに3連敗を喫して崖っぷちで迎えた10月19日の第4戦。7回裏1-1の場面で三塁ランナーだった坂本は岸田行倫のセーフティスクイズで本塁へ激走。気迫のヘッドスライディングで決勝点をもぎ取った。

このように、走攻守それぞれで苦戦しながらも、ここぞの場面で勝利に貢献する働きをする坂本はやはりチームに必要な選手だ。

何より、今でも球場では巨人ファンからの声援は坂本がもっとも大きく、そのなかで打てば球場の雰囲気は大きく変わる。夏場からシーズン終盤、流れを自軍に持っていきたいゲーム展開で、これほどチームに勢いをつける選手はいないはずだ。

とはいえ、今の打撃の状態では試合に使ってさえもらえないのもまた事実。坂本は自分の状態に応じて柔軟に打撃フォームやアプローチを変えて結果を残してきた。坂本といえば、沈み込むようにしてステップする打撃フォームでおなじみだが、このフォームは長打力がある反面、下半身への負担が大きく、年齢的にもリスクが伴う。

そのため、今後は長打を捨てたコンパクトなフォームに切り替え、打率や打点を重視するスタイルへとシフトできるかがカギになると見ている。

坂本が打つことで東京ドームの雰囲気が一変する
坂本が打つことで東京ドームの雰囲気が一変する

さらに、坂本は2023年は開幕から22打席ノーヒットでも、その後、復調して打率を.288でまとめた過去がある。このスランプから脱出し、攻守において機能し始めれば、巨人のリーグ連覇にも現実味が帯びてくるはずだ。

取材・文/ゴジキ