求められるのは“ごまかす”投球
3月2日の東京ドーム。2回を被安打2の無失点に抑えた田中は、そのマウンドを降りる際、安堵にも似た表情を浮かべていた。
オープン戦とはいえ、これが巨人のユニフォームを着て臨んだ本拠地での初登板。無難に終えられ、ホッとしたところがあったのではないか。
田中といえば2013年には24勝0敗1セーブという驚異的な成績で楽天を初の日本一に導き、翌年から7年間はメジャーの名門、ニューヨーク・ヤンキースでエースも務めた球界を代表する投手。今回の移籍も大いに野球ファンを騒がせ、しかもその移籍先が昨季のセリーグ覇者で人気球団の巨人なのだから、いやが応でも注目が集まっているのだ。
田中は2月24日のオープン戦初登板でも1回をほぼパーフェクトに抑えている。ここまでは順調な仕上がりの大投手に、巨人・阿部慎之助監督は「抑える術を知っている」と太鼓判を押し、“開幕ローテ当確”を明言した。
しかし、昨季の登板数はたった1。当然、勝ち星はなく事実上の “放出” での巨人入団という状況なだけに、「かつての活躍を期待するのは酷ではないか」と見る向きも少なくない。
「2023年オフに右肘のクリーニング手術を受け、その影響もあって昨季は未勝利に終わりました。今年1月の自主トレで本人は右肘について万全を強調していましたが、すでに同じ箇所を3度も手術している。
年齢のことを考えても、劇的な復活はなかなか難しいのではないでしょうか」(某スポーツ紙記者)
プロ野球解説者の江本孟紀氏も、田中のここまでの投球を見て「オープン戦の短いイニングを抑えるなんて、プロの投手の8割ができますよ」と手厳しい。
「当たり前だけど、全盛期に比べれば球に勢いはない。今後は打ち気を逸らしたりタイミングを外したり、ピッチングのテクニックで“ごまかす”投球が必要になってくる」(江本氏、以下同)
ヤンキース時代は158キロを記録したこともあった田中の球速は、昨季唯一の1軍登板時に147キロ、先述のオープン戦の2戦にいたってはともに145キロが最速だった。
年齢は36歳。やはり“神の子”といえど、年齢による衰えには抗えないのか。