日本よりも出生率の低いイタリアでは…
しかし、ほかの先進国と比べて大きく異なる点が一つ、日本にはあるという。それは移民の数だ。人口を維持するために必要な出生率の水準は、多くの先進国で約2.1と言われているが、この約2.1という値は移民の動向が考慮されていない。
移民が今後増えてくると予測される場合、人口を維持するためにはこれほど高い出生率が必要ないと報告する研究があるという。
「その研究によると、移民の多いイタリアは1.44ほどの出生率で人口が維持できるようです。イタリアの2024年の合計特殊出生率は1.18ですから、人口維持に必要な値とそれほど大きく離れていません。
一方、日本では今後、移民が大きく増えるとは言えませんので、人口維持に必要な出生率まで大きな差がある、という意味では移民の多い他先進国よりも深刻な状況と言えるでしょう」
出入国在留管理庁によると、2024年6月末の在留外国人数は358万8956人(前年末比17万7964人、5.2%増)で、過去最高を更新した。
だがイタリアは2024年1月1日時点で、外国人の数は約530万人で、総人口の約9%を占めていると言われている。移民を多く受け入れている理由は日本と同じで、高齢化による人手不足だ。しかし移民を受け入れやすくしすぎたゆえの問題も出ており、イタリアが理想的なモデルと言えるわけではない。
そうなったとき、日本はどうすればいいのだろうか。また、今後どういった未来を辿っていくと予想されるだろうか。
「労働力人口の減少、現行の社会保障制度の維持、また過疎化により病院、学校、スーパーなど日常に必要なサービスの供給不足などさまざまな問題が、人口減少により出てくるでしょう。
しかし、悲観するばかりではありません。労働力人口数自体は減少しますが、非正規雇用にとどまらざるをえない人、家事・育児の偏りから出産後働けない人など、日本には働きたいのに働けていない人がたくさんいます。こうした方々の障壁となっていることを理解し、支援することで、経済的にもまだ発展する余地はあるはずです。
人口減少を止めるため、あるいは増やすために少子化対策に希望を見出すメディアや論説を目にしますが、残念ながら少子化が奇跡的に解消したとしても、人口減少が止まるまでに約70年かかります。
一度減少しはじめた人口はなかなか止まらないのです。そのため、人口が減少する未来を前提に、これからの街づくり、組織づくりを今から育んでいくべきだと考えます」
政策の遅れを嘆くだけでは何も変わらない。一人一人がこの現実と真剣に向き合う必要がありそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部