2026年度までは赤字を継続

2025年度のNHKの赤字400億円の発端は2023年に遡る。

2023年1月にNHKの会長に就任した稲葉延雄氏は、日本銀行の理事を務め、かつては日銀の総裁候補の一人と目されたほどのやり手の人物だ。日銀の理事を退任した後はリコーの取締役として経営に参画、ガバナンス改革を主導したことで知られている。

稲葉会長はNHKの会長就任会見で、「私の役割は改革の検証と発展」だと語った。そして、「実際かなり大胆な改革」と付け加えている。

それもそのはずで、NHKは2023年1月に経営計画を策定。受信料を過去最大の1割引き下げる案を盛り込んだのだ。そして同月、前会長の前田晃伸氏は任期を終えて退任、稲葉氏にそのバトンが渡ったわけだ。

NHKは値下げをした2023年度は136億円の赤字、2024年度は570億円程度の赤字を見込んでいる。2024-2026年度の経営計画においては、2026年度までは支出が収入を上回る状態、すなわち赤字が続く計画を立てている。

※「NHK経営計画における受信料及び収支の見通しの算定根拠」より筆者作成
「NHK経営計画における受信料及び収支の見通しの算定根拠」より筆者作成
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 差額は積立金で補う。NHKは2023年度に2000億円近い繰越剰余金を取り崩し、受信料の値下げで生じる赤字補填に備えていた。数年にわたって数百億円単位の赤字の補填を捻出できているのはこのためだが、積立金の原資はこれまで支払われてきた受信料であり、いたずらに垂れ流すわけにはいかない。

公平負担という観点からも、正当な理由なく支払いを拒否する世帯からの徴収が重要になってくる。NHKは従来の外部事業者による受信料の徴収方法を2023年に撤廃しているが、経営計画によれば「新たな営業アプローチ」を推進するという。